メカチューン

メカチューンとは

メカチューンとは、メカニカルチューニングの略称で、自動車のエンジンを改造する手法の一つです。特に、レース用エンジンなどで、自然吸気エンジン本体に改造や加工を施し、過給器などに頼らず、機械的な加工によって出力向上を目指すものを指します。

メカチューンの概要

メカチューンは、量産エンジンを大幅に出力向上させるために改造するため、耐久性などの出力性能以外の要素を軽視する傾向があり、リスクを伴います。そのため、一般的にはドライバーへの負担が大きく、維持も困難なため、市街地での使用には適していません。

しかし、振動や強度などの問題点を、適切な理論に基づいた技術で対策を施すことで、一定の耐久性を確保することも可能です。グループN規定の耐久レースやラリーで使用されるメカチューンエンジンはその一例です。

耐久性の問題から、F1やル・マンなどの世界的なレースでは、市販エンジンではなく、メーカーが独自に開発したエンジンを使用できるカテゴリーが多く存在します。最初から高い目標馬力で設計されていれば、高出力にも耐えられます。また、レギュレーションでオリジナルエンジンの使用が制限されている場合でも、市販エンジンと「同じ形状」の部品をゼロから作り直して使用するチームもあります。これにより、量産品をベースに加工するよりも高い精度で部品を製造でき、振動やイナーシャに対する対策を強化できます。

近年では、燃焼解析技術や制御技術、デジタルデバイスの向上により、市販車でも100PS/Lを超えるエンジンが増えています。例えば、ホンダのVTECエンジン（B16B、B18C、F20Cなど）や三菱自動車のMIVECエンジン（4G92）などが挙げられます。

メカチューンの手法

メカチューンには、主に以下の3つの手法があります。

吸気/排気効率の向上

カム角位相の調整、ポート加工、吸排気系の変更、吸排気流路の表面処理などを行い、流体力学の知識を駆使して吸排気効率を高めます。ただし、馬力向上を優先して最大トルク発生回転数を高回転域にシフトさせると、低中回転域でのトルクが減少する可能性があります。これは、吸気脈動効果や吸気慣性効果の減少、バルブタイミングの特性などが影響するためです。バルブタイミングについては、カム角位相の調整に加えて、可変バルブタイミングシステムも有効です。しかし、レースなど高回転域のみを使用する場合は、VTECなどの可変バルブタイミングリフト機能を無効にし、高回転域に特化したカムを使用することもあります。

燃焼効率の向上

圧縮比の向上（ピストン形状の見直しやガスケット厚の変更、シリンダーヘッドの面研削など）、燃焼室形状の最適化、電子制御直噴技術、吸気混合比および点火時期の最適化などを行い、熱力学などの知識を駆使して燃焼効率を高めます。圧縮比や排気量の向上は、理論上の最大出力増加につながりますが、ノッキングやデトネーションなどによりエンジンが損傷するリスクが高まります。

フリクションロスの低減

動的バランスの最適化、摺動抵抗の減少などにより、出力ロスを低減します。材料力学や機械加工などの知識が必要です。摺動部におけるクリアランスの調整や潤滑系統の最適化も含まれます。エンジン回転数の上限を上げて出力増加を図る場合は、バルブスプリングのサージング現象やピストンリングのフラッタリング現象、出力上昇に伴う加振力の増大、各部品の機械的強度の低下などが生じるため、多くの機械的な対策が必要となります。

関連項目

ターボチューン
チューニング
* チューニングカー

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