メズマライザー

メズマライザー



サツキが手掛けた、ボーカロイドの初音ミクと重音テトをフィーチャーした楽曲。2024年4月27日にリリースされたサツキのデビューアルバム『Circus‘s Detail』に収録されている。

楽曲の世界観



楽曲のタイトルである「メズマライザー（Mesmerizer）」は、英語で「催眠術師」や「人を魅了するもの」を意味する言葉である。本作の根底には、現代社会の抑圧の中で感情を押し殺して生きる初音ミクに対し、重音テトが「催眠」という形で魅力的な現実からの逃避を提案するという物語が描かれている。当初、初音ミクは重音テトの提案に抵抗を示す（この抵抗は、ミュージックビデオ中に見られるモールス信号やハンドサイン、あるいはクイズの答えの頭文字などが組み合わさると「help」や「SOS」といった緊急信号になるという形で暗示されている）ものの、社会での生活に対する不安感から、次第に催眠を受け入れていくことになる。物語の終盤では、彼女らは現実を否定し、催眠によって作り出された状態を自身にとって合理的であると受け入れるに至る様子が描かれている。

制作背景



「メズマライザー」の制作は、サツキが既存の枠に囚われない、新たな音楽表現を模索する中で始まった。型を破る試みとして、あえて「型に嵌まった」ポップな楽曲を作ろうと決意したサツキは、かねてよりTwitterで交流のあったクリエイター、channelにミュージックビデオの制作を依頼した。しかし、その後にchannelがDECO27の楽曲『ラビットホール』の二次創作として発表し、大きな話題となっていた『Pure Pure』の流行を目の当たりにしたサツキは、自身のクリエイターとしての立ち位置とchannelとの間に大きな差があることを痛感する。この経験が、サツキに自身の全力を投じた楽曲制作へと駆り立てる契機となり、「メズマライザー」が誕生した。楽曲のメロディーや構成には、トーマやkemuといった、ボーカロイドを高速かつ高音域で歌わせるスタイルを得意とする先駆者たちの影響があることを、サツキ自身が後のインタビューなどで明かしている。また、本楽曲に重音テトをボーカルとして起用することは、当初は計画されていなかった。しかし、MV制作者であるchannelが、初音ミクと重音テトという二人のキャラクターの関係性を、しばしば不和を含んだ形で描いていたことから、サツキは「二人に仲良くしてほしい」という願いを込めて、重音テトのボーカルを追加することを決めたと語っている。

反響と評価



「メズマライザー」は、その耳に残るポップでキャッチーな曲調とは裏腹に、歌詞やミュージックビデオの随所に散りばめられた不穏な要素や示唆的な表現が、リスナーの間で大きな話題を呼んだ。このギャップが国内外のファンを魅了し、楽曲や物語に隠された意味を探る様々な解釈や考察がインターネット上で活発に展開された。その一方で、一部の考察が過熱し、楽曲の内容と直接関係のないサツキの過去の作品にまで無理に関連付けた言及が見られるようになったため、サツキは自身のSNSにおいて、そうした過度なこじつけや言及は控えてほしいと呼びかける一幕もあった。楽曲の人気は、二次創作の広がりにも波及し、動画投稿サイトには多数の「歌ってみた」動画や、楽曲の世界観をモチーフにした二次創作動画が投稿され、盛り上がりを見せた。また、視覚的にポップな表現を用いながらも、その根底に不穏なメッセージ性や展開を含んでいる点において、2000年代にインターネット上で人気を博したFLASHアニメーション作品「なつみSTEP!」との類似性を指摘し、共感を表明するユーザーも一部に存在した。チャートアクションにおいても目覚ましい成果を上げ、Billboard JAPANが集計するニコニコ VOCALOID SONGS TOP20では、2024年5月6日付のチャートで初登場8位を記録。翌週には前週比6倍近いポイントを叩き出し、2位以下に圧倒的な差をつけて堂々の首位を獲得した。さらに、日本の音楽シーン全体の動向を示すBillboard Japan Hot 100にも、2024年6月3日付のチャートで65位に初登場を果たした。年末に発表された「ネット流行語100 2024」では、年間ランキングのトップ20に入る単語に贈られるトップ20単語賞（19位）を受賞し、その年を象徴するインターネットカルチャーの一つとして認知された。

ミュージックビデオの記録



楽曲「メズマライザー」のミュージックビデオは、クリエイターであるchannelが制作を担当し、楽曲のリリースと同時に公開された。その洗練された映像表現と楽曲内容とのシンクロ率の高さが評価され、公開からわずか3日間で再生回数100万回を突破する驚異的なスタートを切った。さらにその勢いは衰えず、公開から13日後の2024年5月11日には、ボーカロイド楽曲としては当時最速記録であったゆこぴの楽曲『寝起きヤシの木』が樹立した15日という記録を塗り替え、1000万回再生を達成した。その後も再生回数を伸ばし続け、6月28日には5000万回再生。そして2024年11月17日には、公開からわずか204日という驚異的な速さで、ボーカロイド楽曲としては史上6曲目となる累計再生回数1億回を達成し、再び自身の持つ最速記録を大幅に更新した。

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関連情報



VOCALOID

外部リンク



メズマライザー / 初音ミク・重音テトSV - YouTube
メズマライザー / 初音ミク・重音テトSV - ニコニコ動画

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