歌ってみた

「歌ってみた」とは、SNSや動画共有サイトで、既存の楽曲をアマチュアが自ら歌ってカバーした動画のジャンルを指します。歌唱だけでなく楽器演奏によるカバーは「演奏してみた」「弾いてみた」などと呼ばれます。

概要

「歌ってみた」は、自分の歌声を録音または撮影し、インターネット上で公開する行為です。その動画は「歌ってみた動画」と呼ばれます。2000年代中盤、ニコニコ動画やYouTubeといった動画投稿サイトの登場により、アマチュアシンガーが既存の楽曲をカバーした動画を投稿するようになりました。当初、これらの投稿者は「歌い手」と呼ばれ、「歌手ほどではない」という謙遜のニュアンスを含んでいました。

「歌ってみた」という表現は、2007年5月にニコニコ動画のカテゴリタグとして採用されたことに由来します（2019年にカテゴリタグとしては廃止）。現在ではアマチュアシンガーの間で広く使われていますが、プロのシンガーが自身の曲や他のアーティストの曲をカバーする「歌ってみた動画」も注目を集めています。また、メジャーデビューを果たす「歌い手」も多数存在します。

歌ってみたと著作権

音楽作品には、著作権と著作隣接権という2種類の権利が存在します。著作権は作品を創作した人に、著作隣接権は演奏者などに与えられます。そのため、カラオケ音源などを無断で使用して「歌ってみた動画」を配信すると、著作隣接権の侵害となります。さらに、イラストや動画も著作権で保護されているため、無断使用は著作権侵害となります。

ただし、YouTubeやニコニコ動画などのストリーミング配信サイトは、JASRACやNexToneなどの著作権管理会社と包括利用許諾契約を結んでいるため、ユーザーはこれらのサイトが管理する楽曲の演奏や歌唱に関して、著作権料を支払う必要はありません。ただし、原曲の無許可配信は依然として著作権侵害に該当します。

ボカロと「歌ってみた」の関係

2007年8月にVOCALOIDの初音ミクが登場して以降、「ボカロP」が制作したボカロ曲を二次創作としてカバーするアマチュアシンガーが増加しました。特に、ryo氏の楽曲『メルト』は、halyosy氏やガゼル氏など多くの「歌い手」によってカバーされ、「歌ってみた」の人気を大きく押し上げました。VOCALOID文化と「歌い手」文化は相互に影響し合い、ニコニコ動画やYouTubeで人気ジャンルとして成長しました。

「歌ってみた」動画でボカロ曲が多く採用される理由としては、複雑な構成を持つボカロ曲を歌うことで歌唱力をアピールできる点や、ボカロ曲の制作者がカラオケ音源をピアプロなどのCGM支援サイトで公開しているため、動画制作が容易な点が挙げられます。

歌い手

「歌ってみた」を中心に活動するアマチュアシンガーは「歌い手」と呼ばれ、既存の楽曲やボカロ曲をカバーしていました。その後、「歌い手」が集まった「歌い手グループ」も登場しました。

近年では「歌い手」がオリジナル曲をリリースするようになり、「歌い手」と「ネットシンガー」の区別は曖昧になっています。2020年代には、オリジナル曲でデビューする「歌い手グループ」も登場しています。

歌い手をテーマとした作品

歌い手をテーマにした作品も多く存在します。

アニメ
『UniteUp!』 (TOKYO MX放送, 2023年冬)
一般漫画
れぇ『うちの旦那は歌い手です。』 (PHP研究所, 2013年4月10日)
矢田恵梨子『茜色のコンポーザー』→『アカネノネ』 (月刊!スピリッツ→週刊ビッグコミックスピリッツ連載, 2022年〜2024年)
むぐら『escape into the light』 (まんがタイムきららキャラット連載, 2023年〜)
こきち『いれいすハウスへようこそ！～個性バラバラな歌い手が一緒に住むことになった件～』 (りぼん連載, 2024年〜)
小説
あいら『ウタイテ!』 (野いちごジュニア文庫)
成人向け漫画
クジラックス『歌い手のバラッド』(コミックエルオー連載, 2015年〜)

脚注

[1] JASRACなどの著作権管理団体と包括契約を結んでいる動画共有サイトでは、ユーザーが著作権料を負担することなく楽曲を利用できる場合があります。ただし、原曲の無許可配信は著作権侵害にあたります。

関連項目

nana (アプリ)
同人[[音楽]]
ユーザー生成コンテンツ

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