メソッド

「メソッド」（メソード、英語: method）は、物事を行うための方法や方式、手順全般を指す一般的な言葉です。しかし、特定の専門分野や固有の名称として用いられる際には、日本語に訳されずにカタカナ表記の「メソッド」または「メソード」として定着していることが多い言葉でもあります。

この言葉は、分野によって非常に多様な意味合いを持って使われます。

教育・芸術分野における指導法

教育、音楽、バレエ、演劇といった分野においては、特定の教授法や指導体系を指してこの語が用いられます。例えば、音楽教育では、経験に基づいて作曲法を教える「バークリーメソッド」や、幼児期からの音楽教育法である「スズキ・メソード」が知られています。教育全般では、具体的な事例研究を通して問題解決能力を養う「ケースメソッド」、外国語教育で会話を重視する「オーラルメソッド」などがあります。演劇分野では、俳優が内面的な感情を重視して役作りを行うための演技論・演技法を「メソッド演技法」と呼びます。

その他の分野の技法・方式

教育や芸術分野以外でも、「メソッド」という言葉は様々な専門的な技法や体系を指すのに使われます。品質工学の分野では、製品開発や技術開発において効率的かつ頑健なシステムを設計するための考え方や手法を「タグチメソッド」と称します。プレゼンテーションにおいては、大きな文字と短い文章を組み合わせることで視覚的に訴える効果を高める「高橋メソッド」があり、これを応用した「もんたメソッド」といった派生的な技法も存在します。また、身体のコンディショニングや体幹を鍛えるエクササイズとして普及しているピラティスは、その独自の運動体系を「ピラティス・メソッド」と呼んでいます。

計算機科学におけるメソッド

計算機科学、特にオブジェクト指向プログラミングの分野では、「メソッド」は他の分野とはやや異なる、技術的な意味合いで用いられます。ここでは、オブジェクト（データとそれに対する操作を一つにまとめたもの）が持つ、固有の振る舞いや操作のことを指します。これは、オブジェクトに対して何らかの処理を実行させるための手続きや関数の集合体と考えることができます。この用語は、オブジェクト指向言語の初期の代表例であるSmalltalkにおいて、オブジェクトのメンバ関数に相当するものを指す言葉として使われたのが始まりとされています。その後、広く普及したJava言語でこの呼び名が採用されたことにより、「オブジェクトに対する操作」という意味での「メソッド」という言葉が、多くのプログラマにとって一般的なものとして定着しました。他の言語では「メンバ関数」「関数」「手続き」などと呼ばれることもありますが、オブジェクト指向の文脈では「メソッド」がよく使われます。

固有名詞としてのメソッド

これらの専門的な用法とは別に、「メソッド」という言葉が特定の固有名詞として用いられる例もあります。例えば、2017年に韓国で公開された映画のタイトルに『メソッド』があります。これは上記の「方法」「方式」といった一般的な意味や、特定の分野の技法を直接指すものではなく、作品固有の名称として使われている例です。

このように、「メソッド」という言葉は、その基本的な意味である「方法」や「方式」から派生し、様々な分野で特定の体系化された技法、指導法、あるいは計算機科学における技術的な概念、さらには固有名詞に至るまで、非常に多様な文脈で用いられる言葉と言えます。その都度、どの分野での用法かを理解することが、正確な意味を把握する上で重要となります。

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