ピラティス・メソッド

ピラティスとは

ピラティス・メソッドは、ドイツ人フィジカルトレーナーのジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスによって1920年代に開発されたエクササイズです。ジョセフ自身は自身のメソッドを「コントロロジー」と名付けていましたが、日本では一般的にピラティスまたはピラテスと呼ばれています。まれにティラピスという誤った表記も見られます。

ピラティスの概要

ピラティス・メソッドは、ジョセフ・H・ピラティスが提唱した身体調整法であり、20世紀前半に真の健康と幸福を手に入れることを目的としていました。現在では、アメリカ、ドイツ、イギリス、日本など世界中に広まっています。

ジョセフは自身のメソッドを「コントロロジー」と呼び、単なるエクササイズではなく、「全身の細かな筋肉と精神を自分自身でコントロールするための学問」と定義していました。

ピラティスは大きく分けて、現代的にアレンジされた「コンテンポラリーピラティス」と、ジョセフ・ピラティスのオリジナルスタイルである「オリジナルピラティス（クラシカルピラティス＝コントロロジー）」の2つに分類されます。

ピラティスの表記と発音

「ピラティス・メソッド」という表記は、ドイツ語と英語の単語を組み合わせたものです。メソッドは英単語「method」のカタカナ転写であり、ピラティスは開発者の苗字である「Pilates」のドイツ語読み[piˈlaːtəs]に近いものです。英語では「ペラーティーズ」と発音されます。

ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスの名前は、ドイツ語発音に基づけば「ヨーゼフ・フベルトゥス・ピラータス」、英語に基づけば「ジョセフ（ジョゼフと発音される場合もある）・ヒューバータス・ペラーティーズ」となりますが、日本では独英を混ぜて「ジョセフ・ピラティス」と表記されることが多いです。

ピラティスの効果

ピラティスは、身体のストレッチ、筋力強化、バランス強化を目的としてデザインされたエクササイズと身体の動作法です。実践することで理想的な姿勢と動作を学び、慢性的な痛みの改善、障害の予防、運動パフォーマンスの向上、リハビリテーションを可能にします。正しい運動パターンを体に覚えさせることで、生活の質を向上させる効果も期待できます。

ピラティスは体幹とインナーマッスルの強化法として広まっていますが、実際には体全体を整える効果があり、体幹だけでなく四肢の筋力強化、柔軟性の向上、筋持久力の向上も期待できます。

エクササイズの多くは脊柱（背骨）や骨盤の動きに焦点を当てており、ピラティス独特の呼吸法と組み合わせながら、それらのアライメントを整えることを重視します。初心者から上級者まで幅広く難易度を調整でき、個々の体の特徴や健康状態に合わせて実践することが重要です。

近年では、リハビリテーションを目的としてピラティスを導入する人が増えており、リハビリ時間の短縮、機能改善、怪我の早期発見と予防に役立つことが知られています。医療従事者もピラティス指導者資格コースに参加し、様々な施設で活用されています。

オリジナル・クラシカルピラティスの特徴

ジョセフ・ピラティスが定義したオリジナルのピラティスは、心身の調和を目的としたエクササイズシステムであり、彼はこのメソッドを「コントロロジー」と呼びました。ピラティスのメソッドは、以下の要素に基づいています。

- 呼吸: 正しい呼吸法により、身体のエネルギーを高め、動作を効率化します。
- 集中: 各動作に集中し、体と心を連動させます。
- コントロール: 体の全ての動きを意識してコントロールします。
- センター（体幹）: 体幹を「パワーハウス」と呼び、全ての動作の中心として強化します。
- 正確さ: 各動作を正確に行い、無駄のないエクササイズを目指します。
- 流動性: 動きは滑らかで連続的であることを重視します。

オリジナル・クラシカルピラティスは、ジョセフ・ピラティスの作ったエクササイズの形を現在でも変えずに実践することを特徴としています。

ピラティスの種類

ピラティスには、マットのみを使用する「マットピラティス」と、専用器具を使用する「マシンピラティス」があります。マシンにもオリジナルの形状のものと、現代的なものが存在します。

ピラティスのレベルには、ダンサーやアスリート向けの運動強度の高いもの、一般的なフィットネスや娯楽としてのもの、リハビリテーションとしてのものなどがあります。自身の身体レベルやライフスタイルに合ったピラティスを選ぶ必要があります。

エクササイズの内容は、ジョセフの考案したオリジナル（クラシカルメソッドスタイル）の動きと、現代的にアレンジされたコンテンポラリーピラティスに分けられます。また、身体を整えるコンディショニングピラティスは、コントロロジーメソッドを行う前段階として、身体の取り扱いを覚えるためのプレピラティスとして扱われることがあります。

マットピラティス

マットピラティスは、マットを使用してグループレッスンやプライベートレッスンで行われます。グループレッスンでは、体幹を中心とした全身運動が行われることが多く、指導者によって肩こり改善やリズムピラティスなど、特別な目的を持たせたプログラムが組まれることもあります。サークルやローラーなどの小道具を取り入れることもあります。

イクイップメントピラティス

イクイップメントピラティスは、ジョセフが開発した専用器具を使用して行われるピラティスメソッドで、プライベートレッスンやセミプライベートレッスンが主流です。

代表的な器具には、ピラティスリフォーマー、トラピーズテーブル（キャディラック）、タワー、チェアー、バレル（スパインコレクター）、ラダーバレル、ペド・プル、フットコレクターなどがあります。これらの器具を使うことで、多種多様なエクササイズが可能になり、マットピラティスよりも幅広い負荷の調整ができます。

特にピラティスリフォーマーでは、約600種類もの動きが可能であり、筋力があまりない人や高齢者、怪我をしている人には動きをサポートする負荷に、アスリートには負荷を上げるなど、個人の状態に合わせて調整できます。また、深層部の筋肉や関節の動きを意識しやすくなるため、目的に応じて器具を使い分けることが重要です。

ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスの経歴

ジョセフ・ヒューベルトゥス・ピラティスは、1883年にドイツで生まれました。幼少期は病弱でしたが、父が体操選手であったことから、トレーニングを始めました。その後、東洋と西洋両方の身体訓練法を研究し、ギリシャの文化や彫刻にも関心を抱きました。

第一次世界大戦中、収容所で負傷者のリハビリテーションのために、マットレスベッドのスプリングを利用した器具を考案しました。これが後に「キャディラック」と呼ばれる器具の基礎となりました。彼が開発したこのリハビリが、「ピラティス・メソッド」の始まりとなります。

戦後、ドイツで護身術の指導や軍警察の訓練を担当し、モダンダンスにも興味を持ちました。1925年にアメリカに移住し、ニューヨークでスタジオを開設しました。そこで多くのアスリートやダンサーに認められ、ビジネスマンや医者、音楽家、サーカス芸人、学生など、幅広い層に指導を行いました。口コミで噂が広まり、ビビアン・リー、サー・ローレンス・オリビエ、キャサリン・ヘプバーンなどの映画スターや富裕層も顧客になりました。

ジョセフの教え子たちは「第一世代ティーチャー」と呼ばれ、ピラティスを広める上で重要な役割を果たしました。1934年に『ユア・ヘルス』、1945年に『リターン・トゥ・ライフ・スルー・コントロロジー』を出版しました。しかし、医療界の無理解に苦しみながら、1967年に84歳で亡くなりました。

ピラティスの商標権問題

ピラティスはもともとジョセフ・ピラティスが創始したエクササイズですが、1995年にアメリカで「PILATES」が商標登録され、使用が制限されるという問題が発生しました。商標権を主張した人物は、他のインストラクターに「ピラティス」という言葉の使用を禁じ、ライセンス料の支払いを要求しました。

1996年に訴訟が起こり、2000年に「PILATES」という商標は無効と判断され、誰もが「ピラティス」という言葉を自由に使用できるようになりました。この判決は、ピラティスの普及に大きく貢献しました。

ピラティス関連団体

Pilates Method Alliance (PMA)
PMAは、2001年に設立されたピラティス指導者のための非営利団体であり、コンテンポラリーピラティスメソッドの普及と教育、認定資格の発行を行っています。

Asia Pilates Alliance (PIA)
PIAは、アジア太平洋地域でのピラティスの成長と発展を促進する専門組織です。認定プログラムや継続教育、ネットワーキングの機会を提供しています。

ピラティスを実践する有名人

タイガー・ウッズ（プロゴルファー）やカート・シリング（元メジャーリーガー）などがピラティスを実践しています。アメリカ海軍でもピラティスマシンを使用したエクササイズが行われています。

ピラティスで使用されるプロップス

ピラティスチェア、スパインコレクター、アークバレル、フレックスバレル、フレックスクッション、ピラティスサークル、ピラティスバンド、フォームローラー、スモールボール、BOSUなどが使用されます。

これらの器具やプロップスは、ピラティスの効果を高め、多様なエクササイズを可能にします。

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