メディア級駆逐艦

メデア級駆逐艦は、第一次世界大戦の勃発に伴い、イギリス海軍が戦力増強のためにギリシャ海軍向けに建造中であった駆逐艦を緊急購入したことで誕生しました。この艦級は、アドミラルティM級駆逐艦をベースとした設計であり、いくつかの点で差異が見られます。

開発の背景

1913年の第一次バルカン戦争において、ギリシャ海軍は目覚ましい活躍を見せ、その後のギリシャ海軍の増強計画へと繋がりました。オスマン帝国海軍の反撃を警戒したギリシャは、イギリスの造船所に軽巡洋艦2隻と駆逐艦4隻を発注しました。しかし、1914年に第一次世界大戦が勃発すると、イギリス海軍は自国の戦力増強を急ぐ必要に迫られ、建造中だった輸出用の軍艦を緊急購入する方針を決定。その結果、ギリシャ海軍が発注したこれらの艦もイギリス海軍に編入されることとなり、駆逐艦として購入されたのがメデア級でした。

設計

メデア級の設計は、アドミラルティM級を基にしています。主な相違点として、1番煙突が増高され、2番砲の装備位置が1番煙突と2番煙突の間に移動しました。また、無線空中線の展開のため後檣が延長されています。機関部においては、ボイラー室が2室に分割され、その間に機械室が配置されるなど、配置にも差異があります。速力は32ノットであり、オリジナルであるアドミラルティM級と比較すると若干遅いという特徴があります。

艦砲は、アドミラルティM級と同様に4インチ砲を3門搭載しています。当初は50口径10.2cm砲（BL 4インチ砲Mk.VII）を応急的に搭載していましたが、後にL級（ラフォーレイ級）以降の駆逐艦で標準装備となった40口径10.2cm砲（QF 4インチ砲Mk.IV）に換装されました。水雷兵装は、アドミラルティM級の装備を踏襲し、53.3cm連装魚雷発射管2基を搭載しています。

同型艦

メデア級は、ギリシャ海軍時代にはギリシャ領の島々の名を艦名としていましたが、イギリス海軍に購入されてからは、ギリシャ神話に登場する「M」を頭文字とする女性・女神の名が付けられました。同型艦は以下の4隻です。

メデア (HMS Medea)
メドゥーサ (HMS Medusa)
メルポメネ (HMS Melpomene)
マイア (HMS Maia)

第一次世界大戦中、メデア級は活発な作戦活動に参加しましたが、そのうち1隻が事故で失われました。大戦を生き残った3隻は、ギリシャ海軍に引き渡されることなく、1921年にスクラップとして売却解体されました。

総括

メデア級駆逐艦は、戦時下の緊急措置によって誕生した艦級であり、アドミラルティM級をベースとしつつも、独自の改良が加えられています。その短い運用期間にもかかわらず、第一次世界大戦において重要な役割を果たしました。しかし、戦後はその役割を終え、解体されたという歴史を持っています。

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