メトロカード (ニューヨーク)

メトロカードとは

メトロカードは、ニューヨーク市都市交通局（MTA）が発行する磁気ストライプ式プリペイドカードです。1992年に導入され、かつて使用されていたトークン（切符）の回収作業を軽減する目的がありました。このカードは、ニューヨーク市地下鉄をはじめ、パストレイン（PATH）、スタテンアイランド鉄道、エアトレインJFK、ルーズベルト・アイランド・トラムウェイといった鉄道から、ビーラインバス、ハドソン・レール・リンク、MTAリージョナル・バス・オペレーションズ、ナッソー・インターカウンティ・エクスプレスといったバスまで、幅広い公共交通機関で利用できます。

歴史

1983年、MTA内で磁気ストライプ式プリペイドカードによる運賃支払いが提案されました。当時のMTA会長リチャード・ラヴィッチは、この導入を「最優先事項」とし、トークンでの運賃支払いの廃止を決定しました。この計画は多くの市民にも支持されていました。しかし、開発は官僚的な手続きや意見の不一致により遅延しました。1990年3月、MTA理事会は磁気カードによる運賃支払いシステムの資金調達を投票で決定し、その3ヶ月後にニューヨーク市議会が計画を承認しました。1991年7月、MTA理事会は磁気カードシステムの導入を正式に承認し、キュービック・トランスポート・システムズが最低入札価格1億ドルで落札しました。

1992年10月30日、新しい磁気カードの自動券売機設置が開始され、1993年4月までにメトロカードという名前が付けられました。1994年1月6日には、ニューヨーク市地下鉄のIRTレキシントン・アベニュー線とBMTブロードウェイ線の一部駅にメトロカード対応の改札機が設置されました。

デザインの変遷とサービスの拡充

当初、メトロカードは青色で、黄色で「MetroCard」と書かれていました。1997年7月4日には、メトロカードを使用することで地下鉄とバス間を無料で乗り換えられるようになり、同時にカードデザインが現在の金色に青色の文字に変更されました。1998年1月1日からは、15ドル以上のメトロカード購入でボーナスが加算されるようになり、同年7月4日からは7日間と30日間の乗り放題カードも販売開始されました。

トークン廃止と料金改定

2003年4月13日にトークンの販売が終了し、同年5月4日からはバスを除きトークンでの運賃支払いができなくなりました。その後、基本運賃や各種乗り放題パスの値上げが数回にわたり行われました。残高ボーナスや乗り放題カードの種類も変更されています。2012年には、メトロカードの表面に広告を掲載することが許可されました。

ハリケーン・サンディの影響とメトロカードの一元化

2012年10月のハリケーン・サンディによる被害を受け、一部区間でメトロカードを利用した無料の振替輸送が行われました。2013年2月20日からは、乗り放題メトロカードとペイパーライドメトロカードを1枚に統合できるようになりました。

近年の値上げとカード手数料

2013年3月3日には、新しいメトロカード購入時に1ドルの手数料が加算されるようになりました。2015年3月22日以降も、基本運賃や乗り放題カードの値上げが段階的に行われました。

メトロカードの段階的廃止

2017年10月23日、MTAはメトロカードを段階的に廃止し、スマートフォンや非接触型カードでの運賃支払いに移行することを発表しました。当初、2020年までに新システムを導入する予定でしたが、メトロカード自体は2023年まで利用できることになりました。

低所得者向け割引プログラム

2018年中頃には、ニューヨーク市が低所得者向けにメトロカードを半額で提供するプログラムを開始しました。

メトロカードの種類

メトロカードには、主に以下の種類があります。

シングルライド券: 1回乗車券。地下鉄またはバスに1回乗車でき、バスでは1回のみ乗り継ぎが可能です。
ペイパーライドメトロカード: 任意の金額をチャージして使用するカード。残高が不足したら追加チャージが可能です。乗り放題パスとの併用も可能です。
イージーペイエクスプレスメトロカード: クレジットカードやデビットカードと連携し、残高が一定額を下回ると自動的にチャージされる便利なカード。
エアトレインJFK割引メトロカード: エアトレインJFK専用の割引カード。
乗り放題メトロカード: 一定期間内であれば、地下鉄やバスが乗り放題になるカード。
学生用メトロカード: ニューヨーク市内の公立・私立学校に通う学生に発行されるカードで、運賃が無料または割引になります。
高齢者/障害者割引運賃メトロカード: 高齢者や障害者が利用できる割引カードで、MTAの交通機関の運賃が半額になります。
緊急メトロカード: 警察官、消防士、救急医療従事者向けに発行される緊急用カードです。

運賃と乗り継ぎ

運賃は、メトロカードまたは現金で支払う必要があります。メトロカードを利用した場合、バスから地下鉄、各停バス間の乗り継ぎは1回無料です。現金で支払う場合は、バス乗車時に運転手に乗り継ぎを伝える必要があります。乗り継ぎには時間制限があり、BxM4C系統のバスやPATHは乗り継ぎができません。

購入場所

メトロカードは、以下の場所で購入できます。

地下鉄駅窓口: シングルライド券とエアトレインJFK、PATH用のメトロカードは購入できません。
メトロカード自動券売機: 全ての地下鉄駅、PATH駅などに設置されています。現金、クレジットカード、デビットカードが利用できます。タッチパネルで操作し、視覚障害者向けに点字とヘッドフォンがついています。
メトロカード販売バス・バン: ニューヨーク市とウェストチェスター郡を定期的に回っています。
メトロカード販売者: MTAから許可を得た販売店。
* 通勤鉄道券売機: ロングアイランド鉄道およびメトロノース鉄道の券売機でも購入できます。

将来

MTAは磁気ストライプカードから非接触型ICカードへの移行を計画しています。新しいシステムは、改札の混雑を緩和し、よりスムーズな乗車体験を提供するでしょう。

まとめ

メトロカードは、ニューヨーク市の公共交通機関を利用する上で欠かせない存在でした。その歴史は技術の進歩と社会の変化とともに移り変わり、現在では非接触型カードへの移行が進められています。この記事が、メトロカードの過去と未来を理解する一助となれば幸いです。

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