メトロヴィック F.2

メトロヴィック F.2 (Metrovick F.2)

メトロヴィック F.2はイギリスで初めて飛行を果たした軸流式ターボジェットエンジンであり、1939年からメトロポリタン＝ヴィッカース社によって開発が進められました。しかし、第二次世界大戦中にはその完成を迎えることはありませんでした。このエンジンは、後にアームストロング・シドレー サファイアの基盤となりました。

前史

メトロヴィック F.2の開発は、1926年にアラン・アーノルド・グリフィスが行った学術発表に遡ります。彼はターボジェットエンジンの効率向上を示唆し、航空機推進力の可能性を発表しました。この発表により、グリフィスやヘイン・コンスタントらは、特注の工作機械を用いて検証モデルを試作し、ターボプロップエンジンの基礎を築きました。一方、グリフィスの弟子であったフランク・ホイットルは、遠心式ターボジェットエンジンの実用化を試みましたが、十分な支持が得られず、特許が失効しました。

その後ホイットルは独立して実証機を試作し、飛行試験に成功しました。これを受け、グリフィスはメトロヴィック社に新たな試作を命じ、両社は競い合う形で開発を行いました。

大戦中の開発

メトロヴィック社の技術者は1939年から、先に試作されたベティを基に新たなエンジンの開発に取り組みました。彼らは、8段の軸流圧縮機とアニュラー型燃焼器を持つ二重反転式ターボプロップの試作を行いました。しかし、ホイットルが成功したことで、メトロヴィックは方向転換を余儀なくされ、F.2の開発を急ぎました。初号機は1941年に試運転を開始しましたが、様々な技術的な問題を抱えることとなりました。

1943年頃には、F.2の試験機がグロスター ミーティアに搭載され、飛行試験が始まりました。F.2は当初、静止推力においてW.2よりもはるかに高い性能を発揮しましたが、一方で不安定さが残りました。技術者たちはテストを重ねつつ改良を加え、タービン部に新耐熱金属を使うなどして出力の向上を図りました。最終的にはF.2/4 ベリルとして4,000 lbfの出力を達成しましたが、安定性や耐久性にはまだ課題が残りました。

戦後の開発

メトロヴィック社は1942年からターボファンの開発にも着手しました。F.2/2の改良型がテストされ、燃費向上と騒音低減が実証されました。しかし、戦後間もなく、メトロヴィックはその事業をアームストロング・シドレー社に売却し、ガスタービンの開発を終了しました。

ドイツで進められた軸流ターボジェットエンジンに関する技術者たちは、戦後アメリカやソ連に引き込まれる一方で、イギリスでは引き続き開発が遅れる状況が続きました。そのため、安定したF.2/4 ベリルの発展型の実用化は1950年代に入ってからとなりました。ロールス・ロイスのエイヴォンエンジンと共に、アームストロング・シドレー サファイアが成功を収めるようになります。

諸元 (F.2/4)

• - 形式: ターボジェット
• - 全長: 4,039 mm
• - 直径: 933 mm
• - 乾燥重量: 790 kg
• - 圧縮器形式: 軸流式
• - 離昇推力: 3,500 lbf (15.6 kN = 1,590 kgf)
• - 定格推力: 3,000 lbf (13.3 kN = 1,360 kgf)
• - 燃料消費率: 1.05 lb/(h･lbf) (107 kg/(h･kN))
• - 推力重量比: 2.0:1 (19.6 N/kg)

メトロヴィック F.2は、戦争の激動の中で生まれた技術革新として、後の航空機エンジン開発に大きな影響を与えました。

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