メナヘム・ゴーラン

メナヘム・ゴーラン：ハリウッドを席巻したイスラエルの映画巨匠

メナヘム・ゴーラン (1929-2014) は、イスラエルを代表する映画監督、プロデューサーであり、脚本家としても活躍した人物です。その名は、1980～90年代初頭のハリウッドにおいて、数々の話題作を生み出したキャノン・フィルムズの成功に深く関わっていることから広く知られています。

ゴーランは、従弟のヨーラム・グローバスと共にキャノン・フィルムズを共同経営。同社は、当時としては破格の予算規模と、ショーン・コネリー、チャールズ・ブロンソン、チャック・ノリスといった大物スターを起用した大胆な戦略で、多くの映画を製作しました。『デルタ・フォース』『暴走機関車』『狼よさらば』シリーズなど、観客動員数で大きな成功を収めた作品群は、80年代のアメリカ映画界に大きなインパクトを与えました。ゴーランは監督として約44作品、プロデューサーとしては約200作品を手掛けたと言われています。

彼のキャリアはイスラエル映画界で始まりました。監督作である『サンダーボルト救出作戦』（1977年）は、エンテベ空港奇襲作戦を題材にした作品で、アカデミー賞外国語映画賞にもノミネート。この作品が、後のハリウッド進出のきっかけとなりました。また、イスラエルで製作された『グローイング・アップ』（1978年）は、イスラエル映画史に残る大ヒット作品となり、アメリカでのリメイクも実現するほどでした。

キャノン・フィルムズ時代には、アクション映画だけでなく、幅広いジャンルの作品を製作しました。中には『マスターズ/超空の覇者|マスターズ_超空の覇者』のようなコミックブックを原作とする作品や、ゴダール監督作品など、実験的な作品もありました。しかし、大ヒット作を生み出した一方で、『スーパーマン4 最強の敵』のような商業的な失敗作もあり、キャノンの経営は次第に悪化していきます。

ゴーランは、スパイダーマン映画化にも挑戦しました。ドルフ・ラングレン、ボブ・ホスキンスといった俳優を起用する計画が進められましたが、キャノン・フィルムズの経営破綻により頓挫。権利は後にソニー・ピクチャーズに移り、2002年に新たなスパイダーマン映画が製作されることになります。

ゴーランは常に挑戦を続けました。キャノン・フィルムズ倒産後も「21世紀ピクチャーズ」を設立し、映画製作を継続。しかし、1996年にはこれも倒産し、ゴーランの映画製作キャリアは大きな転換期を迎えることになります。

彼のキャリアにおいて、特筆すべきは『アップル The Apple』（1980年）でしょう。ロック・ディスコサウンドを取り入れた異色のミュージカル作品は、その奇抜さから、現在ではカルト的な人気を誇る「キャンプ・クラシック」となっています。

メナヘム・ゴーランは、ハリウッドでの成功と失敗、そして数々の挑戦を通して、独自の足跡を残しました。その功績は、イスラエル映画界において高く評価され、テルアヴィヴのアズリエリ・センターにある映画館には、彼の名と従弟であるグローバスの名前が冠せられています。近年では、キャノン・フィルムズの作品が再評価される動きもあり、その功績は現在も語り継がれています。2013年には、80年代アクション映画へのオマージュである『エクスペンダブルズ』シリーズのメガヒットを受け、キャノン・フィルムズに焦点を当てたドキュメンタリー映画も公開されました。

ゴーランの生涯は、夢と野望、成功と挫折が入り混じった、まさに映画のようなドラマでした。彼の映画人生は、ハリウッド史に重要な一ページを刻み込み、後世の映画作家たちに多大な影響を与え続けているのです。

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