メフィスト・ワルツ

フランツ・リストの「メフィスト・ワルツ」：悪魔的な魅力に満ちた楽曲群

「メフィスト・ワルツ」は、19世紀の巨匠フランツ・リストが作曲した、全4曲からなるピアノ曲および管弦楽曲です。リストは生涯にわたりゲーテの『ファウスト』をはじめとするファウスト伝説に強い関心を抱いており、この題名が付けられた作品群は、その影響を色濃く反映しています。

各曲の概要

リストはメフィスト・ワルツを複数作曲しており、作曲時期によって作風が異なります。

第1番「村の居酒屋での踊り」S.514

詩人ニコラウス・レーナウの長編詩からインスピレーションを得て作曲されました。管弦楽曲『レーナウの「ファウスト」による2つのエピソード』の第2曲としても知られています。物語は、ファウストとメフィストフェレスが農民たちの集う居酒屋に現れ、メフィストフェレスがヴァイオリンを奏でて人々を陶酔させ、ファウストが踊り子と夜の森へ消えていく様子を描いています。斬新な和声が用いられており、冒頭の五度の積み重ねによる和音は印象的です。ピアノ版は弟子のカール・タウジヒに献呈されました。

第2番 S.515

第1番から約20年後に作曲され、カミーユ・サン＝サーンスに献呈されました。晩年のリストの作風である、実験的な和声法が用いられています。「悪魔の音階」として知られるトリトーンが効果的に使用され、第1番以上に激しい表現が特徴です。和声的には、フェルッチョ・ブゾーニ、アレクサンドル・スクリャービン、バルトークの音楽に共通する要素が見られます。

第3番 S.216

ピアニストのマリー・ジャエルに献呈されました。斬新な和声法がさらに押し進められ、C♯-E♯-A♯-D♯のアルペッジョによる異様な導入部や、四度和音を多用した構成が特徴です。音楽はより苛烈で悪魔的なものへと深化しています。音楽学者のハンフリー・サールは、この曲をリストの最良の作品の一つと評価し、スクリャービンも愛好したと伝えられています。

第4番 S.216b（第1版）、S.696（第2版）

作曲後まもなく改訂されました。第2版は、中間部に挿入する予定だったと思われるスケッチが見つかっており、構想上は未完とされています。当初リストは、「無調のバガテル」として知られる曲を第4番とする予定でしたが、最終的にこの曲にその題が与えられました。

楽曲の魅力

メフィスト・ワルツは、リストの高度な作曲技術と、ファウスト伝説の持つドラマティックな要素が融合した、魅力的な作品群です。各曲はそれぞれ独自の個性を持っており、リストの音楽的多様性を感じることができます。特に第1番は、華麗な技巧と情熱的な旋律が印象的で、ピアノ曲としても管弦楽曲としても広く親しまれています。

リストの「メフィスト・ワルツ」は、悪魔的な魅力と、人間の心の葛藤を描き出した、聴きごたえのある作品群です。ぜひ一度、その世界に浸ってみてください。

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