メモリー・モーテル

ローリング・ストーンズの楽曲「メモリー・モーテル」は、1976年発表のアルバム『ブラック・アンド・ブルー』に収録されている名曲として知られています。この曲は、7分を超える演奏時間を持つ、ストーンズの楽曲の中でも異彩を放つ作品です。

この楽曲の創作は、1975年のアメリカとカナダを回るツアーを控えた時期に遡ります。ミック・ジャガーとキース・リチャーズは、ニューヨーク州ロングアイランドにあるモントークという町に滞在していました。そこには、世界的ポップアーティスト、アンディ・ウォーホルの家があり、二人はそこで創作活動に没頭しました。そして、モントークにあったホテルの名前を冠して「メモリー・モーテル」というタイトルが付けられたのです。

レコーディングは、西ドイツのミュンヘンにあるミュージックランド・スタジオにて、1975年3月から4月にかけて行われました。その後、10月から12月にかけてオーバーダビング作業が行われ、楽曲は完成しました。

「メモリー・モーテル」の最大の特徴は、その演奏時間の長さと、リードボーカルをミック・ジャガーとキース・リチャーズが分担している点です。ストーンズの楽曲では珍しい構成で、二人の異なる歌声が織りなすハーモニーが楽曲に深みを与えています。

参加ミュージシャンも豪華な顔ぶれです。リードボーカルとバッキングボーカルを担当したミック・ジャガーとキース・リチャーズに加え、ロン・ウッド（バッキング・ボーカル）、ビル・ワイマン（ベース）、チャーリー・ワッツ（ドラムス）といったストーンズのレギュラーメンバーが参加。さらに、シンセサイザーとバッキングボーカルでビリー・プレストン、エレクトリックギターでハーヴィー・マンデル、そしてアコースティックギターでウェイン・パーキンズといったゲストミュージシャンが参加し、楽曲に豊かな色彩を与えています。

「メモリー・モーテル」は、単なるロックナンバーとしてだけでなく、1970年代半ばのアメリカを舞台にした、ある種のノスタルジックな雰囲気をまとった曲として捉えることも可能です。ロングアイランドの海岸、そしてモントークのホテルを舞台に、過ぎ去った時間や失われた思い出を想起させるような、どこか物悲しいメロディーが聴く者の心を掴みます。また、歌詞の内容も、過ぎ去った日々への郷愁や、失恋といった普遍的なテーマを扱っており、多くの人々の共感を呼んでいます。

7分を超える長い演奏時間、二人のリードボーカル、豪華なミュージシャン陣、そしてノスタルジックな雰囲気と普遍的なテーマ。これらの要素が絡み合い、「メモリー・モーテル」はローリング・ストーンズの楽曲の中でも、特に高い評価を受けている楽曲の一つとなっています。アルバム『ブラック・アンド・ブルー』を代表する名曲として、現在も多くのファンに愛され続けています。

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