メロッテカタログ

メロッテカタログは、20世紀初頭の天文学における星団研究の一つの成果として知られるカタログです。

カタログの概要

このカタログは、イギリスの天文学者フィリベール・ジャック・メロッテ（Philibert Jacques Melotte, 1880-1961）によって1915年に作成されました。メロッテは、当時利用可能であったフランクリン・アダムズの写真星図を詳細に調査し、そこから新たに245個の星団候補天体をリストアップしました。この作業は、写真技術の発展が天体観測に大きな影響を与え始めていた時代の流れを反映しています。

収録されている天体は主に散開星団ですが、中には後に誤って星団として分類された天体や、他の有名なカタログ（例えばメシエカタログやNGC/ICカタログ）にも既に収載されている天体も含まれています。しかし、これらの既存のカタログにはない、メロッテカタログ独自に番号が振られた星団も多く含まれており、天体観測や研究における参照リストの一つとして現在も利用されています。

主なメロッテ天体

メロッテカタログには245個もの星団がリストアップされていますが、その中でも特に有名な天体や、アマチュア天文家にもなじみ深い天体がいくつか存在します。以下にその一部を紹介します。

Mel 2 (NGC 188)：ケフェウス座に位置する散開星団です。他の多くの散開星団に比べて非常に古い星団として知られており、星団の進化を研究する上で重要な天体とされています。
Mel 22 (M45)：おうし座に輝く有名な散開星団で、一般にはプレアデス星団、あるいは日本で古くから親しまれている呼び名であるすばるとして広く認識されています。肉眼でもはっきりと見ることができ、若い高温の星々が集まっています。
Mel 25：同じくおうし座にある散開星団で、ヒアデス星団の通称を持ちます。夜空でV字型に星が並んでいるように見え、おうし座の目を形作っています（ただし、その近くで明るく輝く一等星アルデバランはヒアデス星団の一員ではなく、手前にある別の星です）。比較的地球に近い星団として、距離測定の基準としても用いられることがあります。
Mel 71：とも座の領域に位置する散開星団です。南天の星座であるため、日本国内では主に本州以南や南半球で観測しやすい天体です。
Mel 72：いっかくじゅう座にある散開星団です。冬の星座であるいっかくじゅう座は、オリオン座の近くに位置しており、この星団も冬の夜空で観測できます。
Mel 102 (IC 2602)：りゅうこつ座にある明るい散開星団で、その輝きから南天のプレアデスとも呼ばれています。名前の通り、南半球の空ではプレアデス星団と同様に目立つ存在であり、多くの若い星が含まれています。
Mel 111：かみのけ座に広がる散開星団です。星の集まりとしては比較的まばらで、範囲が広いことが特徴です。肉眼でもぼんやりとした光の集まりとして捉えることができ、双眼鏡での観測に適しています。

これらの天体は、メロッテカタログの番号が付与されている一方で、M番号（メシエカタログ）やNGC/IC番号（新総合カタログ/索引カタログ）など、他の著名なカタログ番号も持っている場合が多いです。これは、複数の観測者が異なる時代や方法で同じ天体を発見・記録した歴史を示しています。

現在の利用

メロッテカタログは、メシエカタログやNGC/ICカタログほど一般的ではありませんが、特にアマチュア天文家が星団探索を行う際や、特定の研究において参照されることがあります。また、教育目的で、異なるカタログに同じ天体がどのように記録されているかを知るための例としても利用価値があります。メロッテによって編纂されたこのリストは、20世紀初頭の星団観測の状況を伝える歴史的な資料としての側面も持っています。

参考文献

藤井旭『全天星雲星団ガイドブック』誠文堂新光社 1978年 ISBN 4-416-27800-4 C0044

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