メンデルスゾーンの作品一覧

フェリックス・メンデルスゾーンは、短い生涯ながら900曲を超える膨大な数の作品を残しました。彼の作品を整理するには、一般的に用いられる作品番号（Op.）のほかに、2009年にラルフ・ヴェーナーによって編纂された作品主題目録番号（MWV）が学術的な観点から利用されます。なお、作品番号73以降の多くの楽曲は、メンデルスゾーンの没後に出版されたものです。

メンデルスゾーンの創作は多岐にわたり、様々なジャンルに傑作を見出すことができます。

オペラと劇音楽

オペラの分野では、『カマチョの結婚』作品10や『異国よりの帰郷』作品89などが挙げられます。初期にはジングシュピールも手掛けましたが、『さすらう喜劇役者たち』や『ボストンから来たおじさん』のように台本が失われた作品もあります。最後のオペラとなるはずだった『ローレライ』作品98は未完に終わりました。
劇付随音楽では、『アンティゴネ』作品55、『アタリー』作品74、そして最も有名な『夏の夜の夢』作品61があります。特に『夏の夜の夢』は、作品21として先に書かれた序曲を含め、劇全体の音楽として作曲され、その中の「結婚行進曲」は今日でも世界中で広く親しまれています。

管弦楽曲

メンデルスゾーンは12曲の弦楽のための交響曲を若くして作曲しており、弦楽オーケストラという編成で優れた手腕を見せています。これらの多くは1821年から1823年にかけて書かれ、第8番は後に管弦楽版にも編曲されました。
管弦楽のための交響曲としては、初期の第1番 ハ短調 作品11に始まり、円熟期の作品である第3番 イ短調『スコットランド』作品56や、明るく躍動的な第4番 イ長調『イタリア』作品90が特に有名です。また、宗教改革300周年を記念して書かれた第5番 ニ長調/ニ短調『宗教改革』作品107もあります。特筆すべきは、通常「交響曲第2番」と呼ばれる変ロ長調の作品作品52ですが、これは第2部がカンタータとなっているため、MWV分類では交響曲（Nカテゴリ）ではなく大規模な宗教音楽（Aカテゴリ）に位置づけられています。未完に終わった交響曲や断章も存在します。

協奏曲

独奏楽器とオーケストラのための協奏曲も重要なジャンルです。ピアノ協奏曲は第1番 ト短調 作品25と第2番 ニ短調 作品40が広く演奏されますが、初期の作品や未完の第3番も存在します。ヴァイオリン協奏曲としては、ホ短調の作品64がチャイコフスキー、ベートーヴェンのものと並び称される「3大協奏曲」の一つとして絶大な人気を誇ります。また、ヴァイオリン奏者のユーディ・メニューインによって発見された初期のヴァイオリン協奏曲ニ短調MWV O 3も知られています。この他にも、ピアノと弦楽のための作品、ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲、2台のピアノのための協奏曲、さらにはクラリネットやバセットホルンのためのコンツェルトシュテュック作品113, 114など、様々な編成による協奏的作品を残しています。

序曲

演奏会用序曲としては、『夏の夜の夢』序曲 作品21、『静かな海と楽しい航海』作品27、『フィンガルの洞窟（ヘブリディーズ諸島）』作品26、『美しいメルジーネの物語』作品32など、情景描写に富んだ標題音楽的な作品がよく知られています。『トランペット序曲』作品101や『リュイ・ブラース』作品95のような作品もあります。また、吹奏楽のために書かれた序曲作品24も存在します。

ピアノ作品

ピアノ独奏曲はメンデルスゾーンの創作の中心の一つであり、中でも「無言歌集」は全8巻・48曲からなる人気の高い作品群です。それぞれの曲に特定の感情や情景が込められていると言われますが、言葉を伴わない歌として親しまれています。
ソナタは3曲（作品6, 105, 106）のほか、初期の作品も複数あります。技巧的な作品では『ロンド・カプリチオーソ』作品14や『厳格な変奏曲』作品54が有名です。その他にも、性格的小品、幻想曲、カプリッチョ、練習曲、前奏曲とフーガなど、多数の小品が書かれています。作品72の『子供のための6つの小品』はクリスマス小品集としても知られています。
2台のピアノのための作品やピアノ連弾曲もあり、『華麗なアレグロ』作品92のような作品や、変奏曲、ソナタ、幻想曲などが見られます。

オルガン曲

オルガン音楽の分野では、3つの前奏曲とフーガ作品37、そして6つのオルガンソナタ作品65が特に重要です。これらの作品は、バッハ以降のオルガン音楽の伝統を受け継ぎつつ、メンデルスゾーン独自の抒情性や構成力が発揮されており、今日でもオルガン奏者の重要なレパートリーとなっています。他にもコラール変奏曲や前奏曲、フーガなどが残されています。

室内楽曲

室内楽も非常に充実した分野です。
ピアノを含む編成では、ヴァイオリンソナタ（3曲）、チェロソナタ（2曲）といった二重奏曲、ピアノ三重奏曲（2曲）、ピアノ四重奏曲（3曲）といった作品が中心です。また、ヴァイオリン1、ヴィオラ2、チェロ1、コントラバス1、ピアノ1という珍しい編成のピアノ六重奏曲作品110も作曲しています。
ピアノを含まない編成では、6曲の弦楽四重奏曲が主要なレパートリーとなっています。特に、メンデルスゾーンの死の直前に作曲された第6番 ヘ短調 作品80は、彼の晩年の心境を映し出すかのような情熱的な作品です。他にも初期の作品や、異なる時期に書かれた小品を集めた作品81などがあります。弦楽五重奏曲は2曲（作品18, 87）、そして傑作として名高い弦楽八重奏曲 変ホ長調 作品20は、わずか16歳の時に書かれた驚異的な作品です。

声楽曲・宗教音楽

声楽曲は多岐にわたり、特に宗教音楽に重要な作品が多くあります。大規模なオラトリオとして、『聖パウロ』作品36と『エリヤ』作品70は、ヘンデル以降のオラトリオの伝統を受け継ぐ傑作とされています。『キリスト』作品97は未完に終わりました。詩編に基づく作品、教会音楽、モテット、カンタータ、アンセムなども多数作曲しています。
合唱曲には男声合唱のための作品集もあり、カンタータ風の作品として『最初のワルプルギスの夜』作品60などがあります。
歌曲も数多く残されており、有名な「歌の翼に」を含む作品集作品34をはじめ、作品8、作品9、作品19aなど複数の歌曲集が出版されています。作品8と9には、彼の才能豊かな姉ファニー・メンデルスゾーンの作品も含まれています。二重唱曲集作品63や作品77なども親しまれています。
また、様々な編成によるカノンの作品も残されています。

これらの作品群は、メンデルスゾーンの作曲家としての幅広い才能と、古典派の形式を受け継ぎつつロマン派の抒情性を融合させた独自のスタイルを示しています。Op.番号やMWV番号、WoO番号（作品番号なし）など、様々な形で分類され、研究や演奏が行われています。

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