メンプリキウス

メンプリキウス（Mempricius）は、ジェフリー・オブ・モンマスの著書『ブリタニア列王史』に記された、古代ブリテンの伝説的な王です。年代記によれば、彼は紀元前1060年頃に王位に就いたとされています。

王位簒奪と兄弟殺し

メンプリキウスは、父マッダンの死後、弟のマリンとの間でブリテン島の支配権を巡る激しい争いを繰り広げました。一時は全面戦争も辞さない状況となりましたが、メンプリキウスは和平協議を提案し、弟と有力者たちを自らの陣営に招き入れました。しかし、この和平協議は罠でした。メンプリキウスは会談の場で弟マリンを殺害し、王位を強奪したのです。

圧政と悪行

王位を手に入れたメンプリキウスは、およそ20年間ブリテン島を統治しました。しかし、その治世は圧政と悪行に満ち溢れていました。彼は残虐な暴君として振る舞い、多くの諸侯を理由もなく処刑しました。さらに、自身の王位を脅かす可能性のある血縁者や王位継承権を持つ者たちを次々と殺害し、恐怖政治を敷きました。

また、メンプリキウスは道徳的にも堕落していました。彼は男色に耽り、正妻を顧みなくなり、息子であるエブラウクスを疎んじました。彼の退廃的な生活は、民衆の不満を募らせ、王国全体に暗い影を落としました。

悲惨な最期

メンプリキウスの悪行は天に届いたのか、彼は狩猟中に悲惨な死を遂げます。仲間とはぐれたメンプリキウスは、狼の群れに襲われ、無残な姿で命を落としました。暴君の死は、民衆に安堵と解放感をもたらしたことでしょう。

メンプリキウスの死後、彼の息子であるエブラウクスが王位を継承しました。エブラウクスが父の悪政を反面教師とし、善政を行ったかどうかは定かではありません。しかし、メンプリキウスの悪名は、伝説として後世に語り継がれることとなりました。

参考文献

* ブリタニア列王史（訳：瀬谷幸男、南雲堂フェニックス）

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