メーグナー・グルザール

インド映画界で活躍するメーグナー・グルザール（Meghna Gulzar）は、1973年12月13日生まれの映画監督・プロデューサーです。詩人であり著名な映画監督でもあるグルザール氏と、女優ラキー・グルザール氏を両親に持ち、その芸術的な家庭環境の中で育ちました。ヒンディー語映画を中心に活動し、社会派のテーマや実話を基にした作品で高い評価を得ています。特に2018年の監督作『同意』（Raazi）ではフィルムフェア賞監督賞を受賞するなど、現代インド映画界における重要な存在の一人となっています。

1973年12月13日、メーグナーはインドのムンバイで生を受けました。父はグルザール氏、母はラキー・グルザール氏です。彼女の名前「メーグナー」は母によって名付けられ、バングラデシュを流れるメグナ川にちなんでいるといいます。

大学で社会学を専攻した後、メーグナーは映画の世界へ進むことを決意しました。当初はフリーライターとして活動し、『ザ・タイムズ・オブ・インディア』やインド国立映画開発公社発行の『シネマ・イン・インディア』といった媒体に記事を寄稿していました。また、インド詩協会にも詩作品を投稿するなど、文学的な活動も行っていました。映画製作への道を歩み始めてからは、著名な監督サイード・アクタル・ミルザ氏のもとで助監督としての経験を積みます。1995年にはアメリカに渡り、ニューヨーク大学ティッシュ芸術学部の映画製作短期コースで専門技術を習得しました。帰国後、父グルザール氏が手掛けた作品、特に『Maachis』や『Hu Tu Tu』においてアシスタントを務めました。後者の『Hu Tu Tu』では、父と共に脚本も担当しています。この時期、彼女は映画脚本の構想を練る一方で、ドゥールダルシャンで放送されたドキュメンタリー番組や様々なミュージックビデオの制作にも携わっていました。

監督としての本格的なキャリアは、2002年の長編映画『Filhaal...』から始まりました。この作品には人気女優のスシュミタ・セーンとタッブーが出演しています。その後、2007年には2作目の監督作『Just Married』を発表。同年公開されたアンソロジー映画『Dus Kahaniyaan』にも参加し、アムリタ・シンを主演に迎えた一篇「Pooranmasi」を監督しました。

2015年には、2008年にインドで実際に起きた衝撃的な二重殺人事件を題材にした『有罪/Guilty』（Talvar）を監督しました。この作品では、複雑な事件の真相に迫る捜査官や関係者の姿が描かれ、イルファーン・カーン、コーンコナー・セーン・シャルマー、ニーラジ・カビといった実力派俳優が主要キャストを演じました。作品は批評家から高く評価され、メーグナー自身もフィルムフェア賞監督賞にノミネートされるなど、その演出手腕が広く認知されるきっかけとなりました。

続く2018年の監督作『同意』（Raazi）は、ジャングリー・ピクチャーズとダルマ・プロダクションという大手プロダクションが製作を手掛けたスパイ・スリラー映画です。ハリンダル・シッカの小説『Calling Sehmat』を原作とし、パキスタンに潜入したインドの女性スパイの物語を描いています。主演には当時人気絶頂だったアーリヤー・バットとヴィッキー・コウシャルを起用。この作品は批評家からの絶賛に加え、興行収入19億3000万ルピーを超える大成功を収めました。インド国内だけでなく国際的にも注目を集め、フィルムフェア賞では最高の栄誉である作品賞を受賞。メーグナー自身も前作でのノミネートを経て、ついにフィルムフェア賞監督賞を受賞しました。この受賞は、彼女がインド映画界のトップ監督の一人であることを決定づける出来事となりました。

2020年には、アシッドアタック（硫酸攻撃）の壮絶な被害を乗り越えた女性、ラクシュミー・アグルワールの半生を描いた伝記映画『Chhapaak』を監督しました。人気女優ディーピカー・パードゥコーンが主演を務めたこの作品は、社会的なテーマに深く切り込み、多くの批評家から絶賛されました。直近では、2023年に第三次印パ戦争時のインド陸軍参謀総長であったサム・マーネークショーの伝記映画『Sam Bahadur』を製作。再びヴィッキー・コウシャルを主演に迎えています。

メーグナー・グルザールは、単なるエンターテイメントに留まらず、社会的な問題や歴史上の出来事を真摯に見つめ、それを力強く、そして繊細な筆致で映像化する監督として知られています。特に女性を主人公にした物語や、困難に立ち向かう人々の姿を描くことに長けており、インド映画界において独自の地位を確立しています。

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