メーデー (遭難信号)

メーデー（Mayday）とは

メーデーは、無線通信において、船舶、航空機、車両、または人が重大な危機に直面し、即時の救助が必要な場合に発せられる国際的な緊急用符号語です。フランス語の「venez m'aider（助けに来て）」に由来し、人命が危険にさらされている状況を関係機関に迅速に伝えるために用いられます。警察、航空機の操縦士、消防士、各種交通機関などが使用し、遭難信号として広く認知されています。

メーデー呼び出しの特徴

メーデー呼び出しは、雑音が多い状況でも聞き間違えを防ぐため、また、実際の遭難メッセージと区別するために、常に3回繰り返して発信されます（例：「メーデー、メーデー、メーデー」）。この呼び出しが発信された周波数では、救助活動に関わる通信以外のすべての通信が禁止され、救助活動が最優先されます。

メーデー呼び出しが使用される周波数

実際には、沿岸警備隊や航空交通管制などの組織が常に監視している周波数帯は限られており、海事中波の2182kHz、国際VHFのch16（156.8MHz）、航空用の121.5MHzと243.0MHzなどが代表的です。メーデー呼び出しは、モールス符号のSOSに対応するもので、電話での119番（緊急通報用電話番号）に相当します。

メーデー呼び出しへの対応

メーデー呼び出しを受信すると、沿岸警備隊は救難艇やヘリコプターを現場へ派遣し、付近を航行中の船舶は救助のために航路を変更することがあります。虚偽のメーデー呼び出しは、多くの国で犯罪とされ、救助活動の妨害や救助隊員の生命を危険にさらす行為として厳しく罰せられます。例えば、アメリカ合衆国では、最高で6年間の懲役と25万ドルの罰金が科せられることがあります。

航空機におけるメーデー呼び出し

メーデー呼び出しを発信した航空機は、管制塔によって最優先で誘導され、他の航空機は着陸順序を変更するなど、その進路を妨げないように配慮されます。過去には、燃料不足でメーデーを宣言した航空機への対応を巡り、他の航空機が着陸順を譲らずに問題となった事例もあります。

メーデー呼び出しの具体的な手順

沿岸警備隊に連絡を取りたい場合は、VHFのch16で「Coastguard, Coastguard, Coastguard, this is（船舶名）」と呼びかけます。無線機を使用する免許が必要な国が多いですが、緊急時には免許がなくても使用が許可されます。国際VHF無線機は、誰でも簡単に操作できるよう設計されています。

推奨される救難呼び出し形式は、「メーデー」を3回繰り返し、その後、船舶名または識別信号（コールサイン）を3回繰り返します。さらに、「メーデー」と船舶名またはコールサインを繰り返した後、位置、緊急事態の種類、必要な救助、乗船人数といった重要な情報を伝えます。例えば、「メーデー、メーデー、メーデー、こちらはNONSUCH、NONSUCH、NONSUCH。メーデー、NONSUCH。位置は北緯54度25分、西経16度33分。火災が発生し沈没しつつある。すぐに救助されたし。乗船人数は4名。メーデー、NONSUCH。オーバー」といった形式で発信します。

メーデー・リレー

沖合でメーデー呼び出しが沿岸警備隊に届かない場合、付近の船舶が「メーデー・リレー」を行うことがあります。これは、遭難した船舶の代わりに他の船舶が救助を求めるもので、遭難船舶の代わりに沿岸警備組織などに知らせるものです。

メーデーのプロトコル

メーデーの呼び出しは、以下の形式に従うことが推奨されます。

1. 「メーデー、メーデー、メーデー」と3回繰り返す。
2. 「こちらは（船舶名やコールサインを3回繰り返す）」と伝える。
3. 「メーデー、こちらは（船舶名やコールサイン）」と再度繰り返す。
4. 「位置は（緯度と経度、または既知の物体からの方位角）」を伝える。
5. 「状況は（火災、沈没など）であり、乗員は〇〇名、救助を求む」と伝える。
6. 応答がない場合は、再度最初から繰り返す。

メーデーの歴史

メーデーという言葉は、1923年にロンドンのクロイドン空港の主任無線技師であったフレデリック・スタンリー・モックフォードによって考案されました。彼は、緊急時でも操縦士や地上スタッフが理解しやすい遭難を示す単語を求められ、当時最も航空機の往来が多かったパリのル・ブルジェ空港にちなみ、フランス語の「m'aider（助けて）」を基に「Mayday」を提案しました。

その他の緊急呼び出し

音声無線で使用される緊急用語は「メーデー」だけではありません。優先度の低い通信に割り込む権利を持つ緊急メッセージの送信者は、状況に応じて他の用語も使用します。これらの用語も「メーデー」と同様に3回繰り返されます。

パンパン（Pan Pan）

「パンパン」は、「即刻の救助を必要とするような重大で差し迫った脅威」ではないものの、機械の故障や病人の発生などの状況を知らせる際に使用されます。スイス航空111便墜落事故では、この用語が使用されました。医療関連の問題を示す場合は「パンパンメディコ」という用語が使われていましたが、現在では正式には使用されていません。

緊急事態宣言（Declaring Emergency）

航空関係では、「declaring emergency」というフレーズが「メーデー」とほぼ同じ意味で使用されることがあります。

セキュリテ（Securite）

「セキュリテ」は、安全性に関わる情報を伝える際に使用され、航行上の障害や天候に関する情報を伝達します。

通信停止

救助を求める船舶とそれに対応する機関のみが主に使用する用語として、「シーロンス・メーデー」または「シーロンス・ディストレス」があります。これは、特定の周波数を独占し、他の無線局の発信を停止させるためのものです。緊急事態が収束すると、「シーロンス・フィニィ」が放送され、周波数帯の通常使用が再開されます。

航空関係では、同様の意味で「Stop Transmitting - Mayday」や「Distress Traffic Ended」といった表現が使用されます。