モイカ宮殿

モイカ宮殿、別名ユスポフ宮殿は、ロシアのサンクトペテルブルクに位置する、かつてユスポフ家の居城として使用されていた歴史的な建造物です。1770年頃にフランス人建築家ド・ラ・モットによって最初の建設が行われ、その後、複数の著名な建築家たちがそのデザインに携わりました。そのため、宮殿は様々な建築様式が混ざり合った独特な外観をしています。

1830年代には、A・ミハイロフによって大規模な改築が行われ、現在の近代的な外観が形作られました。1830年から1917年まで、この宮殿はロシア有数の貴族であるユスポフ家の所有となり、慈善活動や美術品収集で知られるようになりました。特に、宮殿内部の豪華な装飾は皇帝の宮殿にも劣らないとされ、レンブラント・ファン・レインの作品を含む絵画、宝石、彫刻など、4万点以上の美術品が所蔵されていました。これらのコレクションは後に国有化され、エルミタージュ美術館などに収蔵されています。

この宮殿が最も有名になったのは、最後の住人であったフェリックス・ユスポフ公爵によって引き起こされたグリゴリー・ラスプーチンの暗殺事件です。1916年12月16日、ユスポフ公爵とドミトリー・パヴロヴィチ大公はラスプーチンをモイカ宮殿に招き、毒入りのケーキと赤ワインを勧めたとされています。しかし、毒が効かないため、ユスポフ公爵は背後からラスプーチンを銃撃し、さらに数回至近距離から撃ちました。それでもラスプーチンは立ち上がろうとしたため、鉄の棒で頭を何度も殴打し、最終的に毛布に包んでモイカ川に投げ捨てました。検死の結果、ラスプーチンの死因は毒や銃撃、殴打ではなく、低体温症であったことが判明しました。

ラスプーチンの死後、ロシア革命が起こり、ソビエト連邦が成立すると、貴族の財産は没収されました。1925年、モイカ宮殿は市の教育委員会に譲渡され、公共の博物館として保存されることになりました。現在でも、宮殿は教育施設として利用され、ラスプーチン暗殺の現場も保存されています。ラスプーチンが逃れようとした中庭は、現在は宮殿に隣接する幼稚園の遊び場となっています。

モイカ宮殿は、その歴史的な背景と豪華な内装から、訪れる人々に深い印象を与え続けています。ラスプーチン暗殺という歴史的事件の舞台となった場所であり、数々の美術品を所蔵していたという文化的な側面も持ち合わせており、歴史と文化が交錯する場所として、多くの人々を魅了し続けています。

ユスポフ宮殿（クリミアにある宮殿）
アルハンゲリスコエ宮殿

出典

公式ウェブサイト (英語)
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