モエビ科

モエビ科の概要

モエビ科（学名: Hippolytidae）は、エビの中で特に多様性に富んだ分類群の一つです。この科にはアシナガモエビやコシマガリモエビ、アカシマシラヒゲエビなど、さまざまな海に生息するエビが含まれています。日本で「モエビ」と呼ばれる種は、実際にはクルマエビ科の一種であるMetapenaeus moyebiを指すため、名称に関して注意が必要です。

特徴

モエビ科には300種以上の種々が存在し、熱帯から寒帯、さらには汽水域から深海に至るまで、さまざまな環境に適応したエビが含まれています。大きさは約1cmから10cmを超えるものまで幅広く、外見も多様です。成体はあまり泳がず、海中の岩や藻、サンゴの隙間に隠れることから「モエビ」という名前がついたと考えられています。

モエビ科のエビの口の周りには3対の顎脚があり、特に外側の第3顎脚が発達しています。このため、6対の脚を持つように見えることがあります。また、前の2対の脚には小さなはさみがあり、第1歩脚は頑丈で第2歩脚は細長く、節に分かれています。これらの特徴は同じ上科に分類されるテッポウエビ科などでも見ることができます。

腹部は「腰が曲がった」体型をしており、太く短い体を持つ種が多いです。複眼の間に伸びる額角は鋸歯が発達していることが一般的で、その形状は種ごとに異なります。特に深海に生息するトゲモエビやイバラモエビは、尖った棘が多く並ぶ特徴があり、和名もこの点に由来しています。

生態の多様性

モエビ科には、浅海に生息する種と深海に生息する種が同じ属に分類されることもあります。このグループは、海のさまざまな環境に適応して進化してきたことが伺えます。

インド太平洋沿岸のマングローブには、ユニークな半陸生のキノボリエビ（Merguia oligodon）が見られます。潮が引いた時、湿った木の根に登って藻類を食べる行動が注目されています。さらに、各地域の環境に適応した小型種が多く生息しており、日本ではアシナガモエビやヤマトモエビなどがよく観察されます。特に内湾のアマモ場では、コシマガリモエビやツノモエビが緑色の体色で目立ちます。

多くの種は大型動物と共生することが知られており、サンゴ礁ではクラゲモエビやサンゴモエビ、大型イソギンチャクに付くイソギンチャクモエビなどが見られます。これらの共生エビは派手な体色を持ち、共生動物の体内にはあまり入らない傾向があります。また、アカシマシラヒゲエビやシロボシアカモエビなどは、ウツボやハタと呼ばれる大型魚の体を掃除します。これらのエビは人気が高く、観察場所として水族館やダイビングスポットでも有名です。

深海には、トゲモエビやモエビモドキで知られるキシノウエモエビ、イバラモエビなどの大型種も生息しており、これらはタラバエビ類と共に漁獲され食用にされることもあります。

分類

モエビ科は約40の属に分類されます。各属ごとに独自の特徴を持ち、それぞれの生態系で重要な役割を果たしています。

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