モザンビーク独立戦争

モザンビーク独立戦争：長く苦しい独立への道

モザンビーク独立戦争は、1964年から1974年まで、ポルトガル領モザンビークでモザンビーク解放戦線（FRELIMO）とポルトガル軍の間で戦われた武力紛争です。この戦争は、470年に及ぶポルトガルによる支配に終止符を打ち、モザンビークの独立をもたらしましたが、その道のりは長く、困難なものでした。

戦争の背景

ポルトガル植民地支配

15世紀末からポルトガルはモザンビークに進出し、16世紀にはポルトガル領東アフリカとして植民地化を進めました。当初は奴隷や金の取引が中心でしたが、19世紀以降はプランテーション開発が進められ、先住民は過酷な労働を強いられました。ポルトガル本国への搾取、先住民への差別、政治的抑圧などに対する不満が、独立運動の原動力となりました。

民族自決運動の高まりとFRELIMOの結成

第二次世界大戦後、アフリカ各地で民族自決運動が高まり、モザンビークでも独立を求める声が大きくなりました。1962年、マルクス・レーニン主義を掲げるモザンビーク解放戦線（FRELIMO）が結成され、エドゥアルド・モンドラーネを指導者として、ポルトガルからの独立を目指す武装闘争を開始しました。

冷戦の影響

冷戦下において、ソビエト連邦や中華人民共和国は、西側諸国の植民地支配からの解放を支援する立場を取りました。FRELIMOはこれらの国々から武器や軍事顧問の支援を受け、ゲリラ戦を展開しました。一方、ポルトガルはNATO加盟国であり、西側諸国からの圧力を受けながらも、植民地維持に固執しました。

戦争の経過

ゲリラ戦の展開

FRELIMOは、タンザニアを拠点としてモザンビーク北部に侵攻し、ゲリラ戦を開始しました。ポルトガル軍は軍事的に優位でしたが、FRELIMOは住民の支持を得ながら、道路や鉄道の破壊、襲撃などを繰り返しました。ポルトガル軍は兵力を増強し、開発計画を進めることで事態の収拾を図りましたが、効果は限定的でした。

ポルトガルの開発計画

ポルトガルは、FRELIMOの勢力拡大に対抗するため、カホラ・バッサ・ダム建設などの大規模なインフラ整備計画を推進しました。しかし、これらの計画は、住民の強制移住や環境破壊を引き起こし、かえって住民の不満を高める結果となりました。

モンドラーネの暗殺とFRELIMOの左傾化

1969年、FRELIMOの指導者モンドラーネが暗殺されました。この暗殺は、ポルトガル秘密警察の関与が疑われていますが、真相は不明です。モンドラーネの死後、FRELIMOはサモラ・マシェルら強硬派が主導権を握り、マルクス・レーニン主義をより明確にするなど、左傾化を強めました。

カーネーション革命と独立

1974年、ポルトガル本国でカーネーション革命が起こり、軍事政権が崩壊しました。新政府は植民地戦争の終結を宣言し、モザンビークとの独立交渉を開始しました。1975年6月25日、モザンビークは正式に独立し、サモラ・マシェルが初代大統領に就任しました。

戦争の影響

モザンビーク内戦

独立後、モザンビークはマルクス・レーニン主義を掲げるFRELIMOによる一党独裁体制となりました。これに反発するモザンビーク民族抵抗運動（RENAMO）が結成され、内戦が勃発しました。内戦は1992年まで続き、多くの犠牲者と社会の荒廃をもたらしました。

ポルトガル人の出国

独立に伴い、約30万人のポルトガル人や混血の人々がモザンビークを去りました。彼らは「レトルナドス」と呼ばれ、ポルトガル社会に大きな影響を与えました。

その後のモザンビーク

内戦終結後、モザンビークは民主化と市場経済化を進め、比較的安定した状態を迎えています。しかし、貧困や格差、地雷問題など、多くの課題が残されています。

モザンビーク独立戦争は、モザンビークの歴史における重要な転換点であり、その後の政治、経済、社会に大きな影響を与えました。この戦争の教訓を活かし、モザンビークが平和で豊かな国になることを願います。

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