モチ・ベドウン

モチ・ベドウン（モンゴル語: Moči Bedü'ün, 中国語: 抹赤別都温）は、13世紀初頭にモンゴル帝国に仕えた千人隊長の一人です。生没年は不明です。

出自と名前の由来

モチ・ベドウンの出自については、ドルベン部族出身であるということ以外、詳しいことは分かっていません。「ベドウン」という名前は、ナイマン部族に属するベテギン氏族に由来すると考えられています。ベテギン氏の母親から生まれた人物だったのかもしれません。

チンギス・カンへの帰参と千人隊長への任命

『元朝秘史』によると、モチ・ベドウンはジャムカと決別した頃のチンギス・カンの下に帰参したとされています。その後の事績は不明ですが、1206年にモンゴル帝国が建国された際に任命された千人隊長の一人、「ダウン(Da'un＞dǎowēn/倒温)」はモチ・ベドウンの転訛であると考えられています。

『元朝秘史』第209節には、チンギス・カンが当初モチ・ベドウンを「心ねじけたる故に」千人隊長としなかったものの、四狗の一人であるクビライと仲が良いことを聞き、クビライと行動をともにするなら大丈夫だろうと考え、千人隊長に任じたという逸話が記されています。このエピソードから、モチ・ベドウンの性格や、当時のモンゴル帝国内部における人間関係を垣間見ることができます。

史料における記述

『元朝秘史』には、モチ・ベドウンは「抹赤別都温(mòchìbiédōuwēn)」または「倒温(dǎowēn)」と記されています。しかし、『集史』にはモチ・ベドウンに関する記述は一切ありません。このことは、モチ・ベドウンがモンゴル帝国の歴史において、必ずしも重要な役割を担った人物ではなかったことを示唆しているのかもしれません。

まとめ

モチ・ベドウンは、13世紀初頭のモンゴル帝国において千人隊長を務めた人物です。出自や事績には不明な点が多いものの、『元朝秘史』にその名が記されており、チンギス・カンの下で活躍したことがわかります。クビライとの関係性や、千人隊長任命に関するエピソードなど、興味深い逸話も残されています。

参考文献

志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年
本田實信『モンゴル時代史研究』東京大学出版会、1991年
村上正二訳注『モンゴル秘史 1巻』平凡社、1970年
村上正二訳注『モンゴル秘史 2巻』平凡社、1972年
* 村上正二訳注『モンゴル秘史 3巻』平凡社、1976年

もう一度検索