モヒカン族の最後 (1920年のアメリカ合衆国の映画)

モヒカン族の最後 (1920年の映画)

1920年に公開されたアメリカのサイレント映画、『モヒカン族の最後』は、ジェイムズ・フェニモア・クーパーによる同名小説を原作とする壮大な作品です。当初はモーリス・トゥールヌールが製作と監督を務める予定でしたが、負傷により途中で降板。代わりに助監督であったクラレンス・ブラウンが共同監督として完成させました。

物語の舞台は1757年、フレンチ・インディアン戦争の只中にあるアメリカ植民地の辺境です。イギリス軍のウィリアム・ヘンリー砦を指揮するマンロー大佐の二人の娘、コーラとアリスが、危険に満ちた地で様々な困難に直面します。主要な撮影は、カリフォルニア州のビッグベアー湖畔やヨセミテ渓谷という雄大な自然の中で行われました。

物語の概要

1757年の夏、フレンチ・インディアン戦争が激化する中、フランス軍とその同盟であるヒューロン族の部隊が、ニューヨーク植民地のジョージ湖南方にあるイギリスの要衝、ウィリアム・ヘンリー砦へ迫っていました。モヒカン族最後の戦士とされるアンカスは、父であり酋長であるチンガチグックの命を受け、差し迫った危機を知らせるため、隣のエドワード砦に駐屯するマンロー大佐のもとへ急ぎます。

マンロー大佐の長女コーラは、勇敢なアンカスに心惹かれます。一方、コーラに一方的な好意を寄せるイギリス軍のランドルフ大尉は、アンカスの存在を快く思いません。マンロー大佐からの救援要請を受けたウェッブ将軍は、コーラとその妹アリス、そしてランドルフ大尉を含む3000人の救援部隊をウィリアム・ヘンリー砦へ派遣します。

砦への道中、一行はヒューロン族の伝令マグアの案内で近道を進むことになります。マグアは味方を装っていましたが、彼は密かに一行を罠にかけるつもりでした。道中で風変わりなデイビッド・ガマット牧師と出会った後、マグアは森の中で道に迷ったふりをします。そこに通りかかったアンカス、チンガチグック、そして優れた斥候ホークアイに道案内を求めると、彼らはマグアがこの地域の地理に精通しているはずだと指摘し、彼の裏切りを見抜きます。

アンカスとホークアイは一行を洞窟に匿いますが、マグアとその部下に見つかり、激しい銃撃戦となります。弾薬が尽きたアンカスたちは囮となって逃走を図りますが、洞窟を探索された白人たちは捕えられてしまいます。

廃屋に連行されたマグアは、コーラを妻にすればアリスを見逃すと脅迫します。しかし、アンカス、チンガチグック、ホークアイが駆けつけ、人質を救出。マグアは崖から突き落とされ、一度は絶命したと思われますが、実際には無事でした。

救出された一行は、イギリス軍の救援部隊と共にウィリアム・ヘンリー砦に到着しますが、砦の状況は絶望的でした。左翼の主要な砲台が破壊されており、防衛力が著しく低下していたのです。臆病なランドルフ大尉は、砦の弱点をフランス軍司令官モンカルムに密告。選択肢を失ったマンロー大佐は砦の明け渡しを決断します。

これは史実でも悪名高いウィリアム・ヘンリー砦の虐殺に繋がります。撤退するイギリス兵や民間人の安全な通行が約束されていたにもかかわらず、フランスから提供されたウィスキーで酔ったヒューロン族は、女性や子供を含む民間人を無差別に虐殺し、砦を焼き払いました。

虐殺に加わっていたマグアは、再びマンロー姉妹を誘拐して逃走します。アンカスとホークアイは執拗にマグアを追跡し、中立のデラウェア族の村にたどり着きます。争いはデラウェア族の長老たちによる評議会に持ち込まれ、アンカスが見守る中、長老たちはコーラを解放し、アリスをマグアのものとすると宣告します。コーラは妹を救うため、自らを身代わりとすることを申し出ます。これに対し、アンカスはコーラを奪い返すことを誓いますが、デラウェア族の掟により、日没までは追跡が禁じられます。

その夜、コーラは逃亡を図りますが、マグアに追いつかれ、断崖の端に追い詰められます。彼女はマグアが近づけば飛び降りると威嚇しますが、マグアは彼女が眠るのを待ちます。眠りに落ちた隙を突き、マグアはコーラの腕を掴みます。彼女は崖から身を投げますが、マグアはなおも腕を離しません。そこにアンカスが現れ、状況は逆転。コーラは助かろうとしますが、マグアはナイフで彼女の指を引き剥がし、コーラは崖下に転落して命を落とします。その後の激しい格闘の末、マグアはアンカスを刺殺。アンカスの遺体は斜面を転がり落ち、コーラの傍らに横たわりました。死の間際、アンカスは手を伸ばし、コーラの手を握り締めます。チンガチグックとホークアイが到着した時には、マグアは逃亡していましたが、ホークアイが放った一発の銃弾により、マグアもまた命を落とします。

コーラとアンカスの合同葬儀が執り行われ、マンロー大佐は娘の死を深く悼み、チンガチグックはモヒカン族最後の生き残りであった息子の死を悼むのでした。

主なキャスト

アンカス（モヒカン族の若き戦士） - アラン・ロスコー
マグア（ヒューロン族） - ウォーレス・ビアリー
コーラ・マンロー（マンロー大佐の長女） - バーバラ・ベッドフォード
アリス・マンロー（マンロー大佐の次女） - リリアン・ホール
チンガチグック（アンカスの父、モヒカン族の酋長） - セオドア・ローチ
ホークアイ（斥候、別名ナッティ・バンポ） - ハリー・ロレイン
ヘイワード少佐（イギリス軍、アリスに恋する） - ヘンリー・ウッドワード
マンロー大佐（ウィリアム・ヘンリー砦司令官） - ジェームズ・ゴードン
ランドルフ大尉（イギリス軍、コーラに横恋慕する） - ジョージ・ハッカソーン
デイヴィッド・ガマット牧師 - ネルソン・マクダウェル

この映画は公開当時非常に好評を博し、映画史家のウィリアム・K・エヴァーソンは本作を傑作と評価しています。その文化的、歴史的重要性から、1995年には議会図書館によってアメリカ国立フィルム登録簿への保存作品に選ばれています。

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