モミジイチゴ

モミジイチゴ：日本の東部に自生する美味なるキイチゴ

モミジイチゴ（学名: Rubus palmatus var. coptophyllus）は、バラ科キイチゴ属に属する落葉低木です。その名の通り、カエデのような掌状に深く裂けた葉が特徴的で、初夏には甘酸っぱい橙黄色の実をつけます。本種は主に日本の本州、東北地方から中部地方にかけての日当たりの良い山野に自生しており、林縁や土手、道端、雑木林、山地などで見かけることができます。

モミジイチゴの形態

モミジイチゴは高さ1～2.5メートルに成長する低木です。茎は直立し、緑褐色で小さな鋭いトゲが残っています。上方の枝は弓状に伸び、緑色や紅紫色をしており、無毛で多くのトゲがほぼ垂直に生えています。日光の当たる部分は赤く、日陰の部分は緑色となり、やや光沢があります。

葉は有柄で互生し、掌状に3～5裂するカエデのような形をしています。葉の長さは3～7センチメートルで、近縁種のナガバモミジイチゴよりも深く裂けるのが特徴です。

花期は春（3～5月）で、短枝の先端に白い花が1つずつ下向きに咲きます。花は直径2～3センチメートルの5弁花です。果期は初夏（5～7月）で、直径1～1.5センチメートルの球形の集合果をつけます。熟すと橙黄色になり、甘く食べられます。ラズベリーの仲間で、実を引っ張ると花托が抜けて帽子のような形になるのも特徴です。

冬芽は長楕円形で光沢のある紅紫色をしています。枝先には仮頂芽があり、側芽は互生します。側芽は5～7枚の芽鱗に包まれています。葉痕は半円球状または逆三角形で、維管束痕は3個あります。

モミジイチゴとナガバモミジイチゴ

モミジイチゴは、近畿地方以西に分布するナガバモミジイチゴ（Rubus palmatus var. palmatus）と近縁種ですが、葉の裂け方や分布域が異なります。ナガバモミジイチゴの葉はモミジイチゴほど深く裂けておらず、葉がより長く伸びます。

モミジイチゴの利用

モミジイチゴの実は食用として利用されます。キイチゴ類の中でも特に美味とされ、生食されることが多く、果実酒にも加工されます。収穫量が多い場合は、ジャムなどに加工することもできます。

参考文献

金田初代、金田洋一郎（写真）『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年
鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社、2014年
高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社、2003年
西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社、2009年
* 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年

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