キイチゴ属

キイチゴ属：多様なベリーの仲間

キイチゴ属( Rubus L.)は、バラ科に属する植物群の総称であり、私たちがよく知るラズベリーやブラックベリーなどの栽培種を含む、非常に多様なグループです。その種数は研究者によって異なり、数十種から数百種に及ぶとされています。一般的に「キイチゴ」と呼ばれるのは、草本性のイチゴ類と区別するために、木本性のイチゴ類、特に果実が食用となるものを指します。キイチゴの果実は、多数の小さな粒が集まってできた集合果という特徴があります。

分布と特徴

キイチゴ属は、主に北半球の寒帯から温帯にかけて広く分布しています。ほとんどの種は、比較的小柄ながらも木質化した茎を持つ落[[葉性]]の低[[木]]ですが、常緑性や匍匐性の種、さらには草本性の種も存在します。茎や葉に棘を持つものが多く見られます。

キイチゴ属の果実は、多数の心皮から形成され、それぞれが独立した果汁を含んだ粒状になります。このため、私たちが目にする果実は、多くの粒が集まった塊状に見えるのです。その味は多様性に富んでおり、食用となる種も多く、いわゆる「野いちご」の多くもこの属に含まれます。

栽培と利用の歴史と現状

キイチゴ属の中で、特に重要な栽培系統はラズベリーとブラックベリーです。ラズベリーは、ヨーロッパと北アメリカに原生種が分布し、ヨーロッパの種が最初に栽培化され、後に北アメリカの種も栽培化されました。寒冷地での栽培に適しています。一方、ブラックベリーは西アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカと広い範囲に自生しており、北アメリカのいくつかの種が栽培化されています。ラズベリーと比較して寒さに弱く、温暖な地域での栽培が適しています。

日本では、古代から室町時代頃まではキイチゴ類の栽培が行われていましたが、その系統は現在では途絶えています。現在、日本で栽培されているのは、主に欧米から導入されたラズベリーやブラックベリーが中心であり、その栽培規模は小規模です。

キイチゴ類の果実は、生食されるほか、ケーキの飾り、シロップ漬け、ジャム、ジュース、果実酒やリキュールなどの原料として幅広く利用されています。さらに、ゴショイチゴ、クマイチゴ、トックリイチゴなどの未熟果を乾燥させたものは「覆盆子」と呼ばれ、生薬として用いられてきました。また、ラズベリーの葉はハーブティー（ラズベリーリーフティー）として、ゴショイチゴの変種である Rubus chingii var. suavissimus の葉は「甜茶」として利用されています。さらに、キイチゴ類の果実の抽出物や種子油は、収斂作用や保湿効果を期待して、化粧品原料としても利用されています。

分類の複雑さ

キイチゴ属は、種間交雑も多く、進化の過程で急速に分化してきたため、種の分類は非常に複雑です。そのため、数十種に大別し、それぞれに多くの亜種や変種を認める説や、細かく数百種に分け、さらにいくつかの亜属や節に分類する説など、様々な分類体系が存在します。例えば、 Rubus idaeus （ヨーロッパキイチゴ）と Rubus strigosus （アメリカイチゴ）は、細かく分類すれば別種とされますが、大まかな分類では同じ種とされることもあります。

主な種

キイチゴ属には多くの種が存在しますが、その中から代表的なものを以下に挙げます。日本に自生する種としては、モミジイチゴ、ナワシロイチゴ、カジイチゴ、クサイチゴなどが知られています。以下に、いくつかの亜属と、その下位分類に含まれる主な種を示します。このリストは網羅的なものではなく、分類体系も研究者によって異なるため、あくまで一例として捉えてください。

(以下、本文中に記載されている亜属と種名の一覧を記載する。ただし、スペースの都合上、本文に含まれるものと同じ内容をに含めることはできません。必要であれば、別途リストを作成し、にURLなどを含める形で対応します。)

終わりに

キイチゴ属は、その多様性と有用性から、私たちの生活に深く関わってきた植物群です。今後も、その分類や生態、利用方法に関する研究が進んでいくことが期待されます。

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