モラトリアム

モラトリアムについて

モラトリアム（moratorium）は、一時的な停止や猶予を指し、特に政府の行動や法律の適用に関して用いられることが多い言葉です。この語は、ラテン語の「mora」（遅延）に由来し、「morari」（遅延する）という意味を含んでいます。モラトリアムには、法的な文脈や心理的な側面など、多様な適用例があります。

一時停止の例

モラトリアムは法律が公布された後、その施行を一時的に停止する期間を示す場合があります。具体的な例としては、以下が挙げられます。

1. 核実験の一時停止: 核兵器の実験が行われない期間を示します。
2. 商業捕鯨のモラトリアム: 商業目的の捕鯨活動が一時的に停止されることを指します。
3. 死刑執行の停止: 一定期間、死刑の執行が行われない状況を指します。
4. 金融モラトリアム: 天災や経済危機の際に、金融取引や契約の履行を一時的に猶予する制度です。日本では、関東大震災後の1923年や、昭和金融恐慌（1927年）、リーマン・ショック（2009年）などに導入されました。

金融モラトリアム法

特に、日本ではリーマン・ショックを契機に制定された「中小企業者等に対する金融の円滑化を図るための臨時措置に関する法律」があります。この法律は、一時的な金融の混乱を防ぐための重要な手段として機能しました。

心理社会的モラトリアム

心理学の分野では、モラトリアムという概念が心理社会的な意味で使われることがあります。エリク・H・エリクソンによって提唱されたこの概念は、特に若者が社会に出ることを一時的に延期されている状態に言及します。この期間は、若者が自由に過ごし人格を形成するための重要な時間であるとされています。大学生活は、勉強に加えて仲間との遊びや活動の場ともなり、この様子は「モラトリアム人間」として問題視されることもあります。特に小此木啓吾の『モラトリアム人間の時代』が示すように、日本ではこの概念がしばしば否定的に評価されることがあります。

歴史的な側面

モラトリアムは、特に社会運動においても重要な役割を果たしました。例として、ベトナム戦争中の学生抗議行動、すなわち「Vietnam Moratorium」が挙げられます。この運動では、北爆の停止を求める学生たちが大規模に集まりましたが、徴兵の影響を受けた若者が多かったため、隔たりを生むこととなりました。