モルゲロンズ病

モルゲロンズ病とは

モルゲロンズ病は、自己診断に基づいた、科学的裏付けのない皮膚疾患の名称です。この病気を主張する人々は、皮膚の傷やただれに、繊維状の物質が含まれていると信じています。しかし、医学的なコンセンサスとしては、モルゲロンズ病は寄生虫妄想の一形態であると考えられています。

症状と誤解

モルゲロンズ病の患者は、皮膚の痛みや不快感、そして皮膚から繊維状の物質が出てくるという症状を訴えます。しかし、これらの繊維を分析すると、多くの場合、衣服やその他の繊維製品に由来することが判明しています。また、傷は強迫的なひっかき行為の結果であることが一般的です。

この病気は、オンラインコミュニティを通じて広まり、患者たちは感染症であると主張し、精神疾患であるという見解に異議を唱えています。一部の研究では、患者の皮膚サンプルからスピロヘータ、ケラチン、コラーゲンが発見されたと報告されていますが、大規模な研究ではこれらの発見は否定されています。

起源と歴史

モルゲロンズ病という名称は、2002年にメアリー・レイタオによって命名されました。彼女は、息子が訴える皮膚の症状に対して、医師が寄生虫妄想と診断したことに不満を持ち、17世紀の文献からこの名前を採用しました。その後、彼女はモルゲロンズ病研究財団（MRF）を設立し、この病気の認知度を高めようと活動しました。

MRFは、アメリカ疾病予防管理センター（CDC）に調査を働きかけ、2006年に調査が開始されました。しかし、2012年に発表されたCDCの研究結果では、患者の試料から病原性生物は見つからず、繊維は綿であることが示されました。また、症状は寄生虫妄想などの精神疾患と類似していると結論付けられました。

メディアの影響

モルゲロンズ病は、メディアで大きく取り上げられ、多くの人々に知られるようになりました。2006年には、CNN、ABC、NBCなどの主要メディアで報道され、2008年にはワシントン・ポストの表紙を飾りました。しかし、これらの報道は、病気の誤った認識を広めることにもつながりました。

また、インターネットの普及により、自己診断に基づく患者が増加し、オンラインコミュニティで情報交換が行われるようになりました。しかし、インターネット上には誤った情報も多く、患者が医師の診断を信頼しなくなるケースも発生しています。

CDCの調査

CDCは、モルゲロンズ病に関する大規模な調査を実施し、その結果を2012年に発表しました。この調査では、患者の59%に認知障害、63%に臨床的意義のある症状が見られ、50%がドラッグを使用、78%が皮膚刺激性の可能性のある有機溶媒に曝露していることが報告されました。しかし、患者の皮膚サンプルからは、寄生虫やマイコバクテリウムなどの病原体は検出されませんでした。

社会的影響と陰謀論

モルゲロンズ病は、インターネットを通じて集団妄想が広まる例として、社会学的に研究されています。患者の中には、生物兵器、ナノテクノロジー、ケムトレイル、地球外生命体などの陰謀論と結びつけて考える人もいます。また、慢性ライム病と関連付け、医師の診断を疑うことで、医療コミュニティからさらに孤立するケースも見られます。

モルゲロンズ病は、医学的な根拠に乏しいものの、多くの人々が苦しんでいる疾患です。正確な情報に基づいた理解と、適切なサポートが求められています。

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