モルダヴィア民主共和国

モルダヴィア民主共和国は、1917年 12月16日に建国され、1918年2月6日に独立を宣言した短命の国家です。ルーマニア語では「Republica Democratică Moldovenească」、ロシア語では「Молдавская Демократическая Республика」と表記されます。現在のモルドバ共和国（沿ドニエストル地域を除く）に加え、北ブコヴィナ、ブジャク、そしてルーマニアの一部地域にまたがる領域を支配していました。この国は、ロシア帝国の崩壊とそれに続く混乱期に誕生し、独自の議会と政府を持っていましたが、最終的にはルーマニアとの連合を選択しました。

歴史

建国と独立

1917年の二月革命によってロシア帝国の政治的影響力が弱まると、ベッサラビア地域では権力の空白が生じました。この状況下で、ベッサラビアの地方行政組織であるゼムストヴォの長官であったコンスタンティン・ミミとその副官ウラジミール・クリスティが、事実上の権力を掌握しました。しかし、農民議会はミミを解任し、アレクサンドル・ケレンスキーが派遣したイオン・インクレッツを新たな政治委員に選びました。インクレッツは着任後、クリスティを副委員に任命し、モルダヴィア民主共和国の成立に向けた動きが加速しました。

1917年10月から11月にかけて選出されたスファトゥル・ツァーリー（国家議会）は、12月から活動を開始し、モルダヴィア民主共和国をロシア民主連邦共和国の一部として宣言しました。しかし、1918年1月、ウクライナ方面でのボルシェビキの占領失敗とウクライナの独立宣言が、ベッサラビアをロシアから事実上切り離しました。これにより、スファトゥル・ツァーリーは1918年2月6日にモルダヴィア民主共和国の独立を宣言しました。

ルーマニアとの連合

独立宣言後、ドイツ帝国、ルーマニア王国、ウクライナ人民共和国、ボルシェビキ・ロシアの間で講和合意が結ばれると、モルダヴィアではルーマニアとの連合を求める声が高まりました。この流れを受け、1918年4月9日、スファトゥル・ツァーリーはルーマニアとの連合を賛成多数で決定しました。連合の条件として、地方自治、ベッサラビア議会の継続、地方議会と行政組織の権限が定められました。これにより、スファトゥル・ツァーリーはモルダヴィア民主共和国の終焉を宣言し、ベッサラビアとルーマニア王国の連合が成立しました。この連合は、後のパリ条約で承認されました。

反対票を投じた議員のうち、アルカディエ・オスモロフスキーはソ連へ移住、シュテファン・バルメスは地方政治家として成功し、ミハイル・スタレンキは教職を続けたとされています。

指導部

モルダヴィア民主共和国の指導部は、スファトゥル・ツァーリー議長であり大統領であったイオン・インクレッツ、長官会議議長パンテリモン・エルハン、そして独立宣言後に閣僚評議会議長となったダニエル・チュグレアヌで構成されていました。スファトゥル・ツァーリーは当初120人の議員で構成されていましたが、後に135人、さらに150人へと増員されました。1918年4月9日の連合決定時には、138人の議員のうち125人が投票に参加しました。

1917年12月21日、スファトゥル・ツァーリーはモルダヴィア民主共和国の政府として長官会議を選出しました。この会議は9人で構成され、7人がモルドバ人、残りはウクライナ人とユダヤ人各1人でした。

行政と組織

スファトゥル・ツァーリーは、国家行政を組織し、無政府状態と混乱を解消し、秩序を確立することを目的としていました。長官会議の行政事務官事務所が設置され、国の行政に関するすべての問題は、この事務所を通じて各長官に伝えられることになりました。また、各長官の同意なしに行われた公的管理地でのすべての行動は無効とされ、同時に管理者は責任を免除されました。これにより、新政府は混乱期における行政の安定化を図りました。

脚注

モルダヴィア民主共和国は、その短い存続期間にもかかわらず、激動の時代における民族自決の動きを示す重要な例です。この国は、ロシア革命という大きな変革期の中で、独自の国家を築こうと努力しました。しかし、周辺の情勢や内部の政治状況により、ルーマニアとの連合を選択し、その歴史を終えることになりました。この歴史は、今日のモルドバのアイデンティティ形成に大きな影響を与えています。

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