ブコヴィナ

ブコヴィナ：歴史と文化が交錯する秘境の地

ブコヴィナは、ウクライナとルーマニアにまたがる地域であり、「ブナの森の国」を意味する美しい名前を持っています。地理的にはカルパティア山脈とドニエストル川に挟まれ、豊かな自然に恵まれています。この地域は、北部がウクライナのチェルニウツィー州、南部がルーマニアのスチャヴァ県とボトシャニ県にあたります。

トランシルバニア、ドナウ・デルタと共に「ヨーロッパ最後の秘境」と称されるブコヴィナは、多様な動植物が生息する自然の宝庫です。また、16世紀のモルダビア公国時代に建設されたルーマニア正教会の修道院や、美しいフレスコ画が今もなお世界遺産として残されており、多くの観光客を魅了しています。

ブコヴィナの歴史

ブコヴィナの歴史は古く、紀元前2世紀にはダキア人が入植しました。その後、ローマ帝国、ゴート族、フン族、アヴァール人など、様々な民族の侵入を受けました。6世紀頃からはスラブ人の移住が本格化し、この地の文化に大きな影響を与えました。

10世紀から11世紀：キエフ大公国の支配下に入る。
12世紀から14世紀：ハールィチ・ヴォルィーニ大公国の領土となる。
14世紀：モルダビア公国の一部となり、黒海まで広がる広大な領土を形成。
15世紀：プルト川沿いの北部がポーランド王国との係争地となる。
1513年：モルダビア公国がオスマン帝国に朝貢を開始するが、自治は維持される。
1775年：ハプスブルク君主国の領土となり、ガリツィア・ロドメリア王国領となる。
1849年：ブコディナ公国として分離。
1918年：ルーマニア王国領となる（南部地方のみ）。
1940年：ルーマニアがソ連の要求を受け入れ、北部地方の一部を割譲。ウクライナ・ソビエト社会主義共和国領となる。
1991年：ウクライナ独立に伴い、北部地方がウクライナ領となる（現在に至る）。

ブコヴィナの概要

ブコヴィナという名称が文献に初めて登場したのは1392年のことです。この地域は、まとまった地域名として用いられてきましたが、政治的に独立した単位を構成したことはありません。モルダビア公国の形成後、初期においては中心的な地域の一つであり、首都であったスチャヴァは南ブコヴィナに位置しています。この時代には、公国が最も繁栄したシュテファン大公の治世も含まれます。

1775年、ハプスブルク君主国が進出し、皇帝直轄の一領邦となりました。ヨーゼフ2世の時代には、ドイツ人をはじめとした大規模な入植が行われました。

文化と観光

ブコヴィナには、ルーマニア正教会の修道院群をはじめとする、多くの歴史的な建造物や文化遺産が残されています。これらの修道院は、美しいフレスコ画で飾られており、世界遺産にも登録されています。代表的なものとしては、以下のものがあります。

ルーマニア正教会のモルダヴィア北部の壁画教会群
プトナ修道院

また、ブコヴィナは詩人パウル・ツェランやローゼ・アウスレンダーの出身地でもあり、文化的な側面からも注目されています。

豊かな自然と歴史、文化が織りなすブコヴィナは、訪れる人々を魅了する秘境の地です。

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