モルトケ級巡洋戦艦

モルトケ級巡洋戦艦は、ドイツ帝国海軍が建造した巡洋戦艦の艦級であり、2隻が建造されました。

概要

前級のフォン・デア・タンで得られた経験を基に、ドイツ帝国海軍初の本格的な巡洋戦艦として設計されました。ヘルゴラント級戦艦よりも若干小口径の主砲を採用しつつも、片舷10門の砲力を確保しています。また、イギリス戦艦に匹敵する重防御を備えていました。

前級からの主な改良点としては、後部主砲を背負い式配置に変更し、艦の中心線上に計3基の主砲塔を配置した点が挙げられます。これにより、砲撃能力が向上しました。船体形状は、船首楼を後部マスト付近まで延長した長船首楼型となっています。

各艦の戦歴

1番艦「モルトケ」は1911年9月30日に竣工しました。当初は地中海戦隊に配備される予定でしたが、第一次世界大戦の勃発により大洋艦隊に所属し、ドッガー・バンク海戦やユトランド沖海戦に参加しました。戦後、スカパ・フローに抑留された後、1919年6月21日に他のドイツ艦と共に自沈しました。

2番艦「ゲーベン」は1912年7月2日に竣工し、地中海戦隊に配備されました。第一次世界大戦勃発時、軽巡洋艦「ブレスラウ」と共にイギリス地中海艦隊の追撃を逃れ、オスマン帝国領コンスタンティノープルに逃げ込みました。その後、オスマン帝国に譲渡され、「ヤウズ・スルタン・セリム」と改名されましたが、運用はドイツ人将兵によって継続されました。オスマン帝国海軍は、この2隻のドイツ艦の加入によって戦力を増強し、イギリスやロシア帝国海軍と戦いました。ロシア帝国海軍が新型戦艦を配備すると、ヤウズもその脅威に晒されました。

第一次世界大戦後、トルコ共和国に引き渡された「ヤウズ・セリム」は、後に「ヤウズ」と改名されました。第二次世界大戦時には機関部の改修や対空機銃の増設が行われましたが、その外観はドイツ帝国時代と大きく変わることはありませんでした。1974年に解体されました。

まとめ

モルトケ級巡洋戦艦は、ドイツ帝国海軍の巡洋戦艦戦力の中核を担った艦級であり、特に「ゲーベン」はオスマン帝国海軍に譲渡後も長きにわたり活躍しました。2隻の同型艦は、それぞれの道を歩みながらも、その生涯を通じて海戦史に名を残しました。

参考文献

ジョン・ジョーダン『戦艦　AN ILLUSTRATED GUIDE TO BATTLESHIPS AND BATTLECRUISERS』石橋孝夫 訳、株式会社ホビージャパン〈イラストレイテッド・ガイド6〉、1988年11月。ISBN 4-938461-35-8。
「世界の艦船増刊第26集　ドイツ戦艦史」(海人社)
「世界の艦船」1984年12月号（No.344） 特集 巡洋戦艦史のまとめ（海人社）
高須廣一「巡洋戦艦のメカニズム」（『世界の艦船』 1999年3月号（No.553）（海人社）pp.78-85掲載）
カール・デーニッツ『ドイツ海軍魂　デーニッツ元帥自伝』山中静三 訳、原書房、1981年12月。ISBN 4-562-01191-2。
三野正洋、古清水正夫『死闘の海　第一次世界大戦海戦史』光人社〈光人社NF文庫〉、2004年7月（原著2001年）。ISBN 4-7698-2425-4。

関連項目

ドイツ海軍艦艇一覧
ゲーベン譲渡のきっかけとなったオスマン帝国海軍の戦艦
エリン (戦艦)（レシャディエ）
エジンコート (戦艦)（スルタン1世）

外部リンク

* Battle cruiser 'Moltke' (1909) モルトケの説明。本艦の竣工当時の写真とイラストと武装のスペックがある。（英語）

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