モレトゥム

モレトゥム：古代ローマのニンニクとチーズのスプレッド

モレトゥム（ラテン語: MORETVM）は、古代ローマにおけるニンニクとチーズを基にしたスプレッドです。この料理は、著名な詩人ウェルギリウスが残した作品『ウェルギリウス補遺集』に登場し、当時の農民の生活を描写する際に用いられました。特に、朝食のためにパンに塗ったりするシーンが印象的で、詩を通じて古代の人々の食生活や文化を知る手がかりとなっています。

食材と調理法

モレトゥムの調理には、モルタリウムとピスティルリという器具が使用されます。これらを使って、ニンニクと塩を混ぜた硬めのチーズに、パセリやルー（ヘンルーダ）、コリアンダー（パクチー）などのハーブを加え、すり潰していきます。仕上げにオリーブオイルとお酢を加え、味や食感を調整し、出来上がったペーストは球状にまとめられ、パンと一緒に提供されます。これによって、食卓に彩りと風味を加えることができます。

名称の由来

モレトゥムという名前はラテン語に由来し、一般的には「サラダ」や「庭で育てられているハーブ」といった意味合いを持つとされています。この名称は、様々なハーブが組み合わされることを反映しているのでしょう。通常、これらのハーブは新鮮な香りを料理に与え、食感や味わいを引き立てます。

文献での言及

モレトゥムは、ローマの作家コルメラが著した『農事論』（De re rustica）でも触れられています。コルメラの記述には、ウェルギリウスの作品に登場するハーブに加え、ミントやチャイブ、レタス、ルッコラ、タイムなど、多種多様な食材が取り入れられています。また、フレッシュチーズやガーリック入りのチーズに加え、松の実やナッツ類、レーズンを用いることも可能で、各家庭や地域によってもアレンジがあったことが伺えます。

さらに、古代ローマ時代に成立した料理本『アピキウス』でもモレトゥムに関する記述があり、調理法や使用する材料について貴重な情報を提供しています。このような文献を通して、古代の料理文化や農民の食事に関する知識を学ぶことができ、現代の料理にも影響を与える要素となっています。

結論

モレトゥムは、単なるスプレッド以上の存在であり、古代ローマの農民たちの素朴な生活や食文化を象徴する重要な料理です。文献に基づく豊富な情報から、当時の食材や調理法を知ることができ、現代にも通じるハーブの使用やスプレッドの魅力を再発見することができます。古代の料理が現代にどう受け継がれているのかを考える上でも、モレトゥムは興味深いテーマと言えるでしょう。

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