モロッコのワイン

モロッコワイン

モロッコワインは、北アフリカのモロッコ王国で生産されるワインです。その歴史は古く、フェニキア人の開拓者によってブドウ栽培が導入されたと考えられています。古代ローマ時代にはその基盤が確立され、隣国アルジェリアと同様に、フランス人入植者によって大規模なブドウ栽培が導入されました。

歴史

1912年から1955年のフランス植民地時代、モロッコはワインの重要な輸出国でした。しかし、1955年の独立後、フランスの専門知識が途絶え、EEC（欧州経済共同体）が1967年に輸入割当制度を導入したことで、EEC諸国への輸出が大幅に減少しました。これにより、モロッコのワイン産業は衰退の一途を辿り、ブドウ畑は他の作物に転換されました。1973年から1984年の間には、ブドウ畑の大部分が国の管理下に置かれ、品質に関わらず固定価格で買い上げられたことが、競争力低下を招きました。

1990年代初頭には、ワイン生産用のブドウが植えられたブドウ畑は13,000ヘクタールにまで減少。その多くは老木や病気に弱い木でした。しかし、1990年代にハサン2世の統治下で、外国（主にフランス）からの投資と専門知識が導入されたことで、モロッコのワイン産業は再び息を吹き返しました。国営農業会社SODEAが、海外のワイン会社にブドウ畑を長期的に貸し出す提案を行ったことがきっかけとなり、カステルグループ、ウィリアム・ピターズ、タイラングループなどの大手ワイン会社が提携を結びました。カステルブランドのブーラワンは、2005年にはフランスで最も売れている外国ワインとなり、2000年代初期には、ブドウ畑の面積は50,000ヘクタールにまで拡大しました。また、一部の小規模投資家も、高品質なワインを目指してこの事業に参入しました。

生産と消費

モロッコのワイン生産量は、フランス占領下の1950年代にピークを迎え、300万ヘクトリットルを超えました。独立後には一時衰退しましたが、再び関心が高まり、生産量も回復し、2013年には約40万ヘクトリットルとなっています。現在、モロッコはアラブ世界でアルジェリアに次ぐ第2位のワイン生産国です。

モロッコの法律では、ビールとアルコールの製造は禁止されていませんが、イスラム教徒への販売は禁止されています。ワインはスーパーマーケットや一部のレストランで購入でき、観光客や外国人にも販売されています。ただし、ラマダーンなどのイスラム教の祭りの期間中は、一部の非イスラム教徒向けの販路を除き、アルコールの販売は制限されます。

ワインとブドウの種類

モロッコで生産されるワインの約75%は赤ワインです。ロゼワインとヴァン・グリが約20%、白ワインは約3%と、赤ワインが圧倒的な割合を占めています。

タファリエルトはモロッコの地場品種で、ワイン用、生食用、レーズン用として栽培されています。

ワインの産地

モロッコには、5つの主要なワイン産地があります。これらの産地の中には、AOG（原産地保証委員会）によって品質が保証された14の地域が存在します。2001年には、コトー・ド・ラトラス・プルミエ・クリュ（「アトラス山脈の丘」の意味）という原産地統制呼称が制定されました。2009年には、モロッコ初のシャトーを名乗るワイン生産者、シャトー・ロスランが承認を受けました。

以下は、モロッコの5つのワイン産地と、それぞれの産地に関連する原産地呼称です。

西・東部
ベニ・サディーンAOG
バーケインAOG
アンガドAOG
メクネス / フェズ地方
ゲロエンAOG
ベニンタAOG
サセAOG
ゾホーンAOG
コトー・ド・ラトラス 第一級
北部平野
ガーブAOG
ラバト／カサブランカ地方
チェラAOG
ゼムAOG
ザールAOG
ゼナッタAOG
サヘルAOG
アル・ジャディーダ地方
ドゥッカラ AOG

モロッコワインは、その歴史と多様なテロワール（土地の個性）が魅力です。近年、品質が向上し、国際的にも注目を集めています。ぜひ一度、モロッコのワインを味わってみてください。

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