モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群

モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群

モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群は、モンゴルの文化遺産として登録された世界遺産のひとつであり、北西部から中南部にわたる地域に点在する3つの岩絵遺跡が対象です。この遺跡群は、紀元前11000年から西暦9世紀までのおよそ12,000年にわたって描かれた数千点の岩刻画を含み、北アジアの生活スタイルや環境の変化を示す重要な証拠となっています。この岩絵群は、モンゴルにおける文化的遺産の中で、オルホン渓谷の文化的景観に続いて2例目となる登録です。

登録対象遺跡

モンゴル・アルタイ山脈には、以下の3つの重要な遺跡があります。

1. ツァガーン・サラー＝バガ・オイゴル
バヤン・ウルギー県のウラーンフス郡に位置する遺跡群で、登録面積は約2100ヘクタールであり、周囲の緩衝地域は3600ヘクタール。ここには約5000の遺跡が存在し、それぞれには1点から160点の岩絵が描かれている。全体的に見ても、狩猟生活や牧畜文化に関する描写が含まれており、特に規模と継続性において重要とされています。

2. 上ツァガーン・ゴル
ツェンゲル郡にあるこの遺跡は、登録面積が9000ヘクタール、緩衝地域は6300ヘクタール。ツァガーン・サラーとも同様に5000の遺跡地区に細分されており、青銅器時代以降の岩絵が見つかっています。地元の人々にとっては、霊峰とされる山も存在しており、文化的意味合いも強い地域です。

3. アラル・トルゴイ
同じくツェンゲル郡にあり、登録面積は200ヘクタール、緩衝地域は800ヘクタール。この遺跡には約300点の岩絵が残されていますが、主に更新世末期の作品が中心です。青銅器時代以降のものはほとんど存在していないと考えられています。

登録の経緯

モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群は、1996年に世界遺産の暫定リストに登録されました。当初は「ツァガーン・サラーの岩絵」のみが対象でしたが、2009年には上ツァガーン・ゴル遺跡群とアラル・トルゴイ岩絵遺跡群が追加され、これらが一緒に2010年に正式に推薦されました。その後、国際記念物遺跡会議（ICOMOS）の調査を経て、2011年に世界遺産として登録されました。

歴史的背景と描写の内容

約12,000年にわたるこの岩絵群の描写は、モンゴル地域における歴史的な生活スタイルの変遷を映し出しています。更新世末期の描画には、マンモス、サイ、ダチョウなど巨大な動物が描かれ、完新世に入るとオーロックスやヘラジカ、アイベックスといった動物が人々の狩猟対象として描写されるようになります。また、狩人の姿が描かれるようになり、狩猟技術の進化も伺えます。

青銅器時代には、道具を使用した複雑な狩猟や、動物を牽引する様子が表現されています。鉄器時代にかけては、馬を使った遊牧生活が描かれ、描写技術も向上。7世紀から9世紀にかけてのテュルク系民族の影響を受けた作品では、武装した騎馬の姿が見られるなど、文化の多様性が感じられます。

このように、モンゴル・アルタイ山脈の岩絵群は、歴史だけでなく文化的な側面においても非常に重要な価値を持っています。これらの岩絵は、古代の人々の生活や文化、そして彼らが引き継いできた伝統の証明として、今もなおその魅力を放っています。

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