モード (ノルウェー王妃)

モード・オブ・ウェールズ（Maud of Wales）は、1869年11月26日にイギリスで生まれ、1938年11月20日に亡くなったノルウェー王ホーコン7世の王妃です。彼女は、1319年以来、デンマークまたはスウェーデンとの同君連合下にあったノルウェーが、約600年ぶりに独立した王国として復活した際に、その王妃となりました。彼女のノルウェー語名は、モード・アヴ・ストールブリタニア（Maud av Storbritannia）です。

生涯

モードは、イギリス王太子アルバート・エドワード（後のエドワード7世）と、デンマーク王女アレクサンドラの末娘として、ロンドンで誕生しました。幼少期からその聡明さで知られ、「ハリー」という愛称で呼ばれていました。母アレクサンドラが毎年デンマークを訪問するのに同行し、時には母の姉妹たちと共にノルウェーや地中海へのクルーズ旅行も経験しました。

1896年6月22日、モードはバッキンガム宮殿の礼拝堂で、従兄弟にあたるデンマーク王子カールと結婚しました。カールは、母アレクサンドラの兄であるデンマーク王太子フレゼリク（後のフレゼリク8世）の次男でした。結婚に際し、父であるエドワード王太子は、イギリス滞在時の住居としてサンドリンガムの館をモードに与えました。1903年7月、その館で、モードとカールの唯一の息子であるアレクサンダー（後のオーラヴ5世）が誕生しました。

カールはデンマーク海軍士官であったため、1905年までは家族は主にデンマークで生活していました。しかし、1905年7月、ノルウェー議会は、1世紀に及んだスウェーデンとの同君連合を解消し、国民投票の結果、カール王子を新しいノルウェー国王として選出しました。カールはこれを受け入れ、自らの名をノルウェー風にホーコン7世と改め、息子アレクサンダーの名前もオーラヴとしました。1906年6月、ホーコンとモードはトロンハイムのニーダロス大聖堂で戴冠式を執り行いました。

モードは王妃になっても、故郷であるイギリスへの愛情を持ち続けました。しかし同時に、新しい母国であるノルウェーにもすぐに馴染み、王妃としての義務を果たしました。特に、子供や動物に関する慈善活動を積極的に支援し、音楽家や芸術家への支援も行いました。また、首都オスロを見渡せる場所にあるコングスセテレンにイギリス風の庭園を造ったり、スキーを習うなど、ノルウェーの文化にも親しみました。モードが最後にイギリス国民の前に姿を現したのは、1937年の甥であるジョージ6世の戴冠式でした。彼女はウエストミンスター寺院で、義理の姉であるメアリー・オブ・テックの隣に座りました。

1938年11月20日、モードは心臓手術の3日後、ロンドンで急逝しました。彼女の遺体は、軍艦に乗せられてノルウェーへ運ばれ、アーケシュフース城の王立墓地に埋葬されました。

関連事項

モード王妃にちなんで名付けられたものとして、以下のものがあります。

ドロンニング・モード・ランド（南極大陸の地域）
クイーン・モード山（南極大陸の山脈）
クイーン・モード湾（カナダの湾）
クイーン・モード湾（サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島の湾）

モード・オブ・ウェールズは、イギリス王室の一員として生まれながらも、ノルウェーの王妃として国民に愛され、その生涯を捧げた人物でした。

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