モード・ジュレ

モード・ジュレ (Maud Jurez)

フランス出身の女優、モード・ジュレは、華麗なダンスの世界から演技の世界へと転身し、独自のキャリアを築いてきた人物です。その経歴は、幼少期からの厳しい芸術訓練と、ジャンルを超えた多様な表現への探求心によって彩られています。

モード・ジュレの芸術への道は、極めて早い段階で始まりました。わずか9歳で、国際的に高い評価を受けるパリ国立オペラの付属バレエ学校に入学。そこで5年間にわたり、クラシックバレエの厳格な基礎と技術を徹底的に学びました。この幼少期からの専門的な訓練は、彼女の身体表現の基礎を確立し、後のキャリアにおいて重要な土台となります。パリ国立オペラ学校での教育課程を終えた後、彼女はスイスのローザンヌにあるモーリス・ベジャールのカンパニーのもとでさらに研鑽を積みました。ベジャールのもとでは、クラシックバレエの枠に留まらない、より現代的で革新的な舞踏技法、特に新古典主義的なアプローチを深く学び、ダンサーとしての表現の幅と深みを大きく広げました。

舞踏家としての卓越した才能を開花させたモード・ジュレは、やがてパリの華やかなエンターテイメント界へとその活動の場を移します。まずは、壮大なレビューで知られる伝説的なキャバレー、リドの所属ダンサーとなり、その優雅な舞と圧倒的な存在感で観客を魅了しました。さらにキャリアを積み上げ、ムーラン・ルージュでは、その名を冠するのにふさわしいトップクラスの踊り子としての地位を確立しました。ムーラン・ルージュでは、数々の有名なプロダクションで重要な役どころを演じ、観客を熱狂させました。この時期、フランス演劇界の巨匠であるジェローム・サヴァリとの共同作業も行われ、彼の演出による作品『La Belle et la toute petite Bête』（「美女と小さな野獣」の意）では、主要キャストとして共演を果たし、ダンサーとしてだけでなく表現者としての力量を遺憾なく発揮しました。モード・ジュレは、フランスのナイトエンターテイメントを象徴する存在の一人として広く認知されるようになりました。

華々しいダンスキャリアを経て、モード・ジュレは新たな表現の可能性を求め、演技の世界へと転身するという大胆な一歩を踏み出します。当初はコメディの分野から女優としてのキャリアをスタートさせましたが、長年ダンスで培ってきた研ぎ澄まされた身体感覚と表現力は、彼女の演技にも自然と活かされました。女優への転向から約3年後、彼女はジャン＝ピエール・カスタルディが主演を務めたTF1制作のテレビ映画『Capitaine Casta: Amélie a disparu』に出演。この作品では偶然にもダンサー役を演じることになり、再び画面上でその美しいダンススキルを披露する機会を得ました。

女優としてのキャリアは着実に軌道に乗り、様々な作品で経験を積んでいきました。2006年には、パスカル・トマが監督を務めた映画『Le Grand Appartement』に出演。レティシア・カスタ、マチュー・アマルリックら名だたる俳優陣が出演した話題作であり、モード・ジュレはザザという小さな役ながらも、その存在感で観る者に印象を残しました。翌2007年10月6日には、テレビタレントとしても新たな才能を発揮します。W9チャンネルの音楽番組『@ vos clips』で司会者としてテレビにデビューし、活動の幅をさらに広げました。

その後も彼女は精力的に映画やテレビドラマへの出演を続け、女優としての地位を確立していきます。主な出演作品としては、父と娘の関係を描いた2011年の映画『Mon père est femme de ménage』、友情をテーマにした2012年の映画『Amitiés sincères』、そして女性の恋愛を描いた2014年の映画『Jamais le premier soir』などがあります。テレビ映画への出演も多く、2008年には『Illusions』に端役で出演したほか、2010年のテレビ映画『Violences d'été』ではアレクシア役を演じ、物語に深みを与えました。

中でも特筆すべき出演作は、フランスを代表する伝説的なポップスター、クロード・フランソワの生涯を描いた2012年の伝記映画『最後のマイ・ウェイ (Cloclo)』です。この作品で、主演のジェレミー・レニエ演じるクロード・フランソワが生涯で唯一結婚した相手である最初の妻、ジャネット・ヴーラコット役を演じました。ジャネットは、当時著名な歌手ジルベール・ベコーの恋人でもあったという複雑な背景を持つ人物であり、モード・ジュレはこの繊細で重要な役柄を見事に演じきり、女優としての評価を高めました。

その後も2015年の映画『Borderline』に出演するなど、モード・ジュレはダンサーとして培った身体表現力と、女優としての豊かな表現力を融合させながら、フランス国内外のエンターテイメント界で精力的な活動を続けています。

主な出演作品：

『Le Grand Appartement』 (2006)
『Mon père est femme de ménage』 (2011)
『Amitiés sincères』 (2012)
『最後のマイ・ウェイ』 (ジャネット役) (2012)
* 『Borderline』 (2015)

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