ヤキマ (ワシントン州)

ワシントン州ヤキマ：農業と軍事が織りなす都市

ヤキマは、アメリカ合衆国ワシントン州ヤキマ郡に位置する都市であり、同郡の郡庁所在地でもあります。2020年の時点で約9万7000人の人口を擁し、その都市圏人口は約25万人にも及びます。ヤキマという地名は、かつてこの地に暮らしていたヤカマ族インディアンに由来しています。ヤキマ族の居留地は現在も市の南部と南東部に存在しています。

豊かな自然と多様な産業

ヤキマは、世界有数のリンゴの産地として知られるヤキマ・バレーに位置しています。このバレーは、良質なワインの生産地としても有名であり、アメリカ合衆国におけるホップ生産量の約75％を担う重要な地域でもあります。このように、農業はヤキマ経済の重要な基盤となっています。

しかし、ヤキマの産業は農業だけではありません。市の北東部には、13万2332ヘクタールという広大な面積を誇るヤキマトレーニングセンターというアメリカ陸軍の軍事演習場があります。乾燥した砂漠地帯が広がるこの演習場は、主にアメリカ陸軍の機甲部隊や航空部隊の射撃訓練に使用されており、カナダ軍や日本の自衛隊など、同盟国の軍隊も訓練のために利用しています。

歴史：先住民と開拓者の歩み

ヤキマ地域、ヤキマ・バレーの最初の住民は、ヤカマ族インディアンであったと考えられています。1805年、ルイス・クラーク探検隊がこの地域を訪れ、豊富な野生生物と肥沃な大地を発見したことが、後の開拓者の入植を促進することになりました。

しかし、開拓者の到来は、ヤカマ族との間で抗争を引き起こしました。1855年にはヤカマ戦争と呼ばれる大規模な紛争に発展し、ヤカマ族は敗北、居留地へ移住を余儀なくされました。1865年にはヤキマ郡が創設され、1886年にはヤキマ市が正式に設立されました。当初はノースヤキマと呼ばれていましたが、1918年に現在のヤキマへと改称されました。

地理：ヤキマ・バレーと周辺地域

ヤキマは、ヤキマ郡のアッパー・バレーに位置しています。アッパー・バレーは、アータナム尾根とラトルスネーク尾根によってローワー・バレーと分けられています。ヤキマ市は、ヤキマ大都市統計地域の中心都市であり、周辺にはセラー市やユニオンギャップ市などの都市、さらに未編入の郊外地域も含まれています。ヤキマ市を中心とした半径32キロメートル圏内には12万人以上の人々が暮らしています。

ヤキマ・バレーの主要な灌漑水源はヤキマ川であり、カスケード山脈のキーチェラス湖から流れ出て、ヤキマ市を通過した後、コロンビア川に合流します。ヤキマ川沿いには、ウォーキングやサイクリングのための遊歩道、公園、野生生物保護区などが整備されています。また、市内にはいくつかの小さな湖もあり、夏には釣りや水泳を楽しむ人々でにぎわいます。

気候：乾燥したステップ気候

ヤキマの気候はステップ気候に分類され、年間降水量は209.8ミリメートルと比較的少ないです。夏は乾燥し、砂漠のような景観となります。冬は寒く、降雪も多いのが特徴です。年間を通して、気温差が大きいことも特徴です。

文化：多様なイベントと芸術

ヤキマでは、年間を通じて様々な文化活動やイベントが開催されています。ヤキマ・バレー博物館は、地域の自然や歴史に関する展示を行っています。また、キャピトルシアターや同盟芸術センターなど、演劇や音楽の公演会場もあります。さらに、ヤキマ交響楽団も活動しています。ヤキマ地域樹木園では、地域固有種や外来適応種の植物を見ることができます。

ヤキマ市は、1994年に全米市民同盟からオールアメリカ都市賞を受賞しています。

スポーツ：プロ・アマチュアチームと競技場

ヤキマには、マイナーリーグの野球チーム、ヤキマ・ベアーズや、サッカーチームのヤキマ・レッズなど、プロ・アマチュアのスポーツチームが複数あります。また、ヤキマ・サンドームやヤキマ郡スタジアムなどの競技施設も整備されています。

交通：道路、公共交通機関、空港

ヤキマ市内には、州間高速道路82号線やアメリカ国道12号線、97号線など主要な道路が走っています。公共交通機関としては、ヤキマ交通が市内と周辺地域を結ぶバス便を運行しています。また、マカリスター飛行場がヤキマの空港として機能しており、シアトルへの商業便も運航されています。

経済：農業、ワイン産業、軍事施設

ヤキマ経済の重要な部分を占めるのは、農業です。ヤキマ・バレーでは、リンゴ、桃、梨などの果物や、トウモロコシ、豆類などの野菜が生産されています。近年は、ヤキマ・バレーのワイン産業が急成長しており、50以上のワイナリーが11000エーカー以上の面積でブドウを栽培しています。

また、ヤキマトレーニングセンターの存在も、ヤキマ経済に貢献しています。アメリカ陸軍だけでなく、他の国の軍隊も訓練のためにこの施設を利用しており、経済効果をもたらしています。ヤキマ中心街では、小売業の変容が進み、新たな商業施設や娯楽施設が開発されています。

観光：中心街の再生と歴史的資源

ヤキマ市は、中心街の再生と保存に力を入れており、歴史的な建物を活用した観光施設なども開発されています。ヤキマ・バレー・トロリーは、かつてのヤキマバレー交通会社の線路を利用した観光トロリーとして運行されています。

教育：多様な教育機関

ヤキマ市には、複数の公立学校、私立学校、高等教育機関があります。ヤキマバレー・コミュニティカレッジは、ワシントン州でも最古のコミュニティカレッジの一つであり、成人教育や専門教育などのプログラムを提供しています。また、ペリー工科大学やパシフィック・ノースウェスト健康科学大学などの高等教育機関もあります。

メディア：ラジオ、テレビ、新聞

ヤキマ・バレーでは、複数のラジオ局、テレビ局、新聞社が情報発信を行っています。

著名な出身者

ヤキマ市からは、アメリカ合衆国最高裁判所陪席判事のウィリアム・O・ダグラス、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・ルーカスなど、多くの著名な人物が輩出されています。

大衆文化におけるヤキマ

ヤキマという地名は、そのユーモラスな発音から、多くのテレビドラマや映画作品で取り上げられてきました。

姉妹都市

ヤキマは、メキシコ、モレリア、日本の青森県板柳町など、世界各地の都市と姉妹都市提携を結んでいます。

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