トンボ科

トンボ科（Libellulidae）

トンボ科（学名：Libellulidae Rambur, 1842）は、トンボ亜目（不均翅亜目）トンボ上科に分類される、多様なトンボのグループです。トンボ目の中では比較的新しい系統に属し、現在最も繁栄している科の一つとされています。

特徴

成虫の形態

トンボ科の成虫は、一般的にがっしりとした体つきをしており、前翅よりも後翅の方が幅広くなっています。これは不均翅亜目の特徴です。ヤンマ科のトンボに比べると小型で、全長は6cm以下のものが多いです。体色は種によって異なり、金属光沢のあるもの、黄色、赤色、青色など、変化に富んでいます。ハッチョウトンボのように雌雄で色彩が異なる種や、マユタテアカネのようにメスに複数の色彩型が存在する種もいます。また、シオカラトンボやハラビロトンボのように、羽化直後のオスがメスと同色で、成熟するにつれて体色が大きく変化する種もよく見られます。

複眼は大きく発達しており、左右の複眼が頭頂部で接しているものが多く、その境界は長い線状に見えます。複眼後縁には突起物がなく、腹部にも耳状突起などの複雑な構造がない、比較的シンプルな形態をしています。前翅の三角室は縦長で、四角室状に変形しているものもあります。前翅と後翅の三角室は形状と向きが異なり、後翅の肛角は突出していません。翅の付け根にある肩縫線は、多少S字状に湾曲しています。

成虫の生態

多くの種は、平らな姿勢で木の枝先などに静止しますが、斜めに静止する種や、飛び立つとなかなか静止しない種もいます。翅を開いた状態で静止するのが一般的です。生息場所は、池、沼、水溜まり、湿地などの止水域が中心ですが、一部には緩やかな流水域を好む種もいます。

オスは、静止または飛翔しながら、水辺の一定空間を縄張りとして守ります。メスは、短い生殖弁で産卵する種が多いですが、長く突き出た生殖弁を泥に差し込んで産卵する種もいます。連結状態、またはメス単独で飛翔しながら、連続的あるいは間欠的に水面や泥に尾端を打ち付けて産卵する種が多いです。近縁種間では種間雑種が確認されており、例えばマユタテアカネとコノシメトンボ、シオカラトンボとシオヤトンボの間で雑種が確認されています。

幼虫（ヤゴ）

トンボ科の幼虫（ヤゴ）は、体が太く、腹部末端に3本の長い尾部付属器と1対の尾毛を持っています。体つきは楕円形で、全長は1～2.5cm程度です。触角は細く小さいです。足や腹部末端の肛錐は比較的短く、腿節は頭部の幅とほぼ同じ長さです。下唇はカゴ状で、下唇基節が頭部の前面と下面を覆っています。触角は7節からなり、直腸鰓を持っています。

分類

トンボ科には、142属987種が知られています。日本国内では25属68種が確認されており、日本のトンボ全体の約3割がトンボ科に属しています。代表的な属としては、シオカラトンボ属やアカトンボ属などがあります。

トンボ科は、以下の亜科に分類されることがあります。

トンボ亜科 (Libellulinae)
アオビタイトンボ亜科 (Brachydiplacinae)
アカトンボ亜科 (Sympetrinae)
カオジロトンボ亜科 (Leucirrhiniinae)
ベニトンボ亜科 (Trithemistinae)
ハネビロトンボ亜科 (Trameinae)
* ウミアカトンボ亜科 (Urothemistinae)

種の保全状況評価

多くの種が、国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストで軽度懸念（LC）などの指定を受けています。日本国内でも、環境省や各都道府県がレッドリストを作成し、多数の種を指定しています。

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