ヤショーヴァルマン1世

ヤショーヴァルマン1世（生年不詳 - 910年）は、クメール王朝の第4代君主（在位：889年 - 910年）であり、碑文には「獅子の男」と讃えられる名君であり、優れた建設者でした。

生涯

インドラヴァルマン1世とインドラデーヴィー1世の子として生まれました。889年に父王の死後、ロリュオス川流域のハリハラーラヤで即位。父インドラヴァルマン1世が築いた「インドラタターカ」と呼ばれたバライ（貯水池）の中央にロレイを建築し、両親や祖父母を祀りました。

即位前には、兄弟との王位継承争いがあったため、ハリハラーラヤの王宮が破壊されました。そのため、後にアンコール・トムが建設されるシュムリアップ川流域一帯に、新たな都を建設することを決意しました。この新都は、第1次アンコール王都とされ、ヤショーヴァルマン1世の名をとってヤショーダラプラと名付けられました。ヤショーヴァルマン1世は、この新都への遷都によって、王国の安定と発展を目指しました。

900年頃には、旧都ハリハラーラヤのバライであるインドラタターカの北東端から、ヤショーダラプラへと繋がる道路を整備させました。さらに、ヤショーダラプラの東には、大規模な貯水池として「ヤショダラタターカ」と呼ばれた東バライを築きました。これらのインフラ整備は、灌漑や水運を改善し、農業生産の向上に大きく貢献しました。

ヤショーヴァルマン1世は、ヒンドゥー教徒であり、プノン・バケン寺院をはじめとするヒンドゥー教寺院を国内各地に建設しました。これらの寺院は、信仰の中心地としてだけでなく、文化や芸術の発展にも寄与しました。また、寺院は精舎としての役割も果たし、僧侶たちの修行の場ともなりました。

910年、ヤショーヴァルマン1世はハンセン病により死去しました。王位は子のハルシャヴァルマン1世が継承しました。ヤショーヴァルマン1世の治世は、アンコール王朝の基礎を築いた重要な時代であり、彼の建設したヤショーダラプラは、後のアンコール王朝の繁栄を支える基盤となりました。

ヤショーヴァルマン1世は、政治、経済、文化の各方面で優れた業績を残し、クメール王朝の歴史において、最も重要な君主の一人として評価されています。

参考文献

* Rooney, Dawn F. (2011). Angkor: Cambodia's Wondrous Khmer Temples (6th ed.). Odissey. ISBN 978-962-217-802-1

もう一度検索