ヤス・フジイ

ヤス・フジイ：国際プロレスから世界へ羽ばたいたレスラーの軌跡

藤井康行、リングネーム「ヤス・フジイ」として知られる日本の元プロレスラーは、1949年大阪府大阪市に生まれました。難波ボディビルジムで鍛錬を積んだ後、1967年3月、仲間と共に国際プロレスに入団。井上末雄や小林省三と同居するなど、若き日の日々はジム仲間との絆で彩られていました。

1968年1月、プロレスラーとしてデビュー。豊登から命名された「藤井東助」「藤井三吉」「零戦隼人」など、様々なリングネームを経て、1970年2月、シャチ横内の誘いを受け渡米。以後、「ヤス・フジイ」または「ヤス・フジ」として活動の拠点をアメリカに移します。この渡米が、彼のレスラー人生における大きな転機となりました。

北米各地を転戦する中で、ヤス・フジイは数々のタイトルを獲得していきます。シャチ横内とのタッグでNWAカナディアン・タッグ王座（バンクーバー版）を獲得。セントラル・ステーツ地区では、ルーファス・ジョーンズ&スティーブ・ボラスからNWA北米タッグ王座を奪取し、4回に渡り戴冠を達成。この間、日本には戻らず1972年には国際プロレスから除名されています。ジョージア地区ではNWAサウスイースタン・タッグ王座を獲得。さらに、カルガリーではスタンピード・インターナショナル・タッグ王座を争うなど、アメリカ各地で活躍しました。

横内とのタッグ解消後も、ヤス・フジイの活躍は続きます。トライステート地区では上田馬之助とタッグを組み、セントラル・ステーツ地区では日系人ギミックのオキ・シキナと組んでNWA世界タッグ王座を獲得。全日本プロレスの佐藤昭雄とも対戦するなど、日本からの遠征組とも交流しました。

1976年11月からは、「ドクター・ヒロ・オオタ」を名乗り、カリフォルニア州ロサンゼルスのNWAハリウッド・レスリングを主戦場に活動。プロフェッサー・トール・タナカとのタッグでNWAアメリカス・タッグ王座を獲得。シングルマッチではキース・フランクス、ザ・ハングマン、アンドレ・ザ・ジャイアントといったそうそうたるレスラーと対戦し、1977年11月にはチャボ・ゲレロを破り、NWAアメリカス・ヘビー級王座を獲得、念願のシングル王座に輝きました。

1978年には、藤波辰巳のWWFジュニアヘビー級王座戦でマスクド・カナディアンのセコンドを務め、藤波との乱闘も演じました。このことがきっかけでチャボ・ゲレロとの抗争も展開。ロン・バスとのタッグでNWAアメリカス・タッグ王座に返り咲きますが、再びチャボ・ゲレロに奪還されました。

1979年11月には、「ヤス・フジイ」として9年ぶりに国際プロレスの『デビリッシュ・ファイト・シリーズ』に参戦。上田馬之助とタッグを組み、IWA世界タッグ王座に挑戦。国際プロレスを裏切ったヒールとして、日本陣営と激しい抗争を繰り広げました。

その後もアメリカ、ヨーロッパで活躍を続け、1980年代にはカルガリーで「カーネル・ヤン・キー」なるキャラクターで活動したり、西ドイツやオーストリアなどで活躍。古巣の中西部地区に戻り、NWAセントラル・ステーツ・タッグ王座を獲得。1985年には新日本プロレスに参戦し、将軍KYワカマツ率いるマシーン軍団の一員として「ストロング・マシーン3号」として活躍。アントニオ猪木、藤波辰巳らと抗争しました。8月1日の両国国技館大会が最後の試合となりました。

引退後はハワイに移住し、観光業に従事しています。2012年には、上田馬之助との共著『金狼の遺言 完全版』で、ダニー・ホッジとのセメントマッチに関する証言を提供するなど、プロレス界への貢献は今も続いています。パイルドライバー、ダイビング・ヘッドバット、バックハンド・チョップ、オリエンタル・クロー、急所打ちなど、多彩な得意技で観客を魅了したヤス・フジイのレスラー人生は、まさに国際色豊かな、波乱に満ちたものでした。

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