ヤハズソウ属

ヤハズソウ属（Kummerowia Schindl.）

ヤハズソウ属はマメ科に属する植物の一群で、ヤハズソウやマルバヤハズソウなど、2種のみが知られています。いずれも一年草で、原野や道端など、日当たりの良い場所に生育します。

特徴

ヤハズソウ属の植物は、小柄な一年草であることが特徴です。茎は地を這うように伸びるか、斜め上に立ち上がり、表面には毛が生えています。葉は3枚の小葉からなる複葉で、小葉の縁は滑らかです。葉脈は特徴的で、側脈が葉の縁まで真っ直ぐに伸びています。このため、葉の先端を摘んで引っ張ると、葉脈に沿って綺麗にV字型に裂けます。この裂けた形が矢筈（矢の端にある、弦をかける部分）に似ていることが、名前の由来となっています。

托葉は楕円形から広卵形で、茎を抱き込むように付きます。小托葉はありません。

花序は葉の付け根から出て、小さな花の集まりを形成します。一見すると単純な構造に見えますが、これは花序の軸が短縮し、各節から出た枝の先端に花が付いたものです。花には、通常の蝶形花である開放花と、萼に包まれた閉鎖花の2種類があります。開放花は花冠が萼よりも長く、雄しべは2つに分かれており、向軸側の1本が離れています。閉鎖花は0～4個あり、自家受粉を行います。果実は節果で、1つの種子を含んでいます。

分布と生育環境

ヤハズソウ属の植物は、東アジアを中心に分布しており、日本にも自生しています。また、両種とも北アメリカに帰化しており、原野や道端などで普通に見られます。しばしば密生して生育している様子が観察されます。

分類

ヤハズソウ属は、かつてはハギ属（Lespedeza）に含められていました。しかし、葉の側脈が葉の縁まで達すること、托葉の幅が広いこと、小花柄が伸びないことなどから、ハギ属とは区別されます。近年では、分子系統解析の結果からも、別属とする説が支持されています。

下位分類

ヤハズソウ属には、以下の2種が含まれます。

Kummerowia stipulacea マルバヤハズソウ
Kummerowia striata ヤハズソウ

人間との関わり

ヤハズソウ属の植物は、日本ではごく普通に見られる雑草です。芝生などでは、その維持管理の妨げになるため、防除方法が検討されています。その一方で、牧草や緑肥として利用できる可能性も指摘されています。また、土壌の浸食防止にも役立つと考えられており、特に北アメリカでは有用な植物として認識されています。

参考文献

大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
佐竹義輔他編 『日本の野生植物. 草本 II 離弁花類』、(1982)、平凡社、
* 根本智行、「ヤハズソウ」：『朝日百科　植物の世界 4』、(1997)、朝日新聞社、：p.293-294.

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