ヤブイヌ

ヤブイヌ（Speothos venaticus）

ヤブイヌは、哺乳綱・食肉目・イヌ科の中で唯一の現生種であり、ヤブイヌ属に分類される肉食動物です。ブッシュドッグとも呼ばれるこの種は、主に南アメリカの特定の地域に生息しています。

分布

ヤブイヌは、南米の以下の国々で見られます:

• - アルゼンチン（北東部）
• - コロンビア
• - ガイアナ
• - スリナム
• - パナマ（東部）
• - パラグアイ
• - ブラジル
• - 仏領ギアナ
• - ベネズエラ
• - ペルー（東部）
• - ボリビア（東部）

このように、ヤブイヌは多様な環境に適応しており、湿度の高いサバンナや川辺林など水辺を好む生息地を選びます。

形態

ヤブイヌの体長は約57から75センチメートル、尾は11から15センチメートル、肩高は約30センチメートルで、体重は4から7キログラムほどです。この種は頑丈な体形を持っており、鼻面は短く幅広い特徴があります。また、全身は短くて粗い体毛で覆われ、体色は暗褐色、頭部や頸部は黄褐色、腹部や四肢は黒いです。

耳は小さく丸みを帯びており、歯は合計38本を有しています。短い四肢には水かきがあり、藪の中や水中を効率よく移動することができます。生育に必要な乳頭の数は8個です。

分類

ヤブイヌ属（Speothos）は、1839年に記載された化石種から発展し、現生種であるヤブイヌが発見されたことで構成が確定しました。現在では、タテガミオオカミ属と単系統群を形成する可能性があると考えられています。

亜種

ヤブイヌには以下の亜種が存在します:
1. Speothos venaticus venaticus: エクアドル東部など。
2. Speothos venaticus panamensis: パナマを中心とする南米北西部。
3. Speothos venaticus wingei: ブラジル南東部。

生態

ヤブイヌは昼夜を問わず活動し、狩猟圧の高い地域では夜間に行動します。ペアや幼獣で構成される小さな群れを形成し、コミュニケーションには鳴き声を使用します。特に、メスは繁殖時にマーキングの頻度が増すことでペア形成や維持に役立てています。また、生活空間にはアルマジロやアリクイの古巣などを利用します。

食性には齧歯類やその他の小動物が含まれており、群れで協力して狩りを行います。この特殊な狩りのスタイルは、種小名の「venaticus」（狩人の意味）にも表れています。

繁殖

繁殖は胎生で、妊娠期間は約65から83日です。通常、1回に3から5頭を出産し、授乳期間は4から5か月です。オスも育児に参加し、食物を運搬します。幼獣は生後数週間で開眼し、早ければ約10か月で性成熟します。

人間との関係

現在、ヤブイヌは生息地の減少、密猟、犬による捕食の影響を受けて生息数が減少しています。ブラジルやペルーでは法的に保護されていますが、飼育下での繁殖は難しくなっています。

近年、日本国内での個体数も減少しており、動物園での管理が求められています。

このように、ヤブイヌはその独自の生態と食性から、自然界で重要な役割を果たしている肉食獣と言えるでしょう。

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