ヤブデマリ

ヤブデマリ（藪手毬）

ヤブデマリ（学名: Viburnum plicatum var. tomentosum）は、ガマズミ科ガマズミ属に分類される落葉低木です。和名は、薮のような場所に生育し、花序が丸いことに由来します。

分布と生育環境

ヤブデマリは、日本の太平洋側の本州（関東地方以西）、四国、九州に分布しています。山地や丘陵地の、沢沿いなどの水辺や湿り気のある林縁に自生します。

特徴

ヤブデマリは、樹高2 - 6メートルほどの落葉広葉樹です。灰黒色の樹皮を持ち、枝は水平方向に広がるのが特徴的です。一年枝の樹皮は褐色で皮目があり、星状毛が多く見られます。古い枝は黒褐色になり、皮目はまばらになります。樹皮は古くなるにつれて色が変化し、裂け目が現れます。

葉は枝に対生し、倒卵形から長楕円形で、長さは5 - 16センチメートルほどです。葉の先端は尖っており、葉縁は全縁です。

花期は5 - 6月で、水平に伸びた枝に上向きに花序を並べて白い花を咲かせます。花序は1対の葉の間から出る散房花序で、やや黄色を帯びた小さな両性花が集まった花序の周りを、白色の大きな5枚の花弁を持つ装飾花が縁取ります。装飾花の直径は30 - 40ミリメートルで、無性花であり花弁だけが広がったものです。5枚の花弁のうち1枚が極端に小さいという特徴的な形をしており、他の種との区別点となります。小さい花弁は花序の内側を向き、大きい花弁が花序の外周を彩ります。中心に集まる両性花の直径は5 - 6ミリメートルです。

果期は8月で、果実は長さ6ミリメートルの楕円形です。夏に赤く熟し、秋には黒紫色に変わります。果序は枝の上に並ぶように見えます。

冬芽は長楕円形で先が尖っており、芽鱗は褐色で2枚あり、星状毛が多く見られます。頂芽は側芽よりも大きく、短い柄があります。側芽は枝に対生します。冬芽の脇にある葉痕は、V字形や倒松形で、維管束痕は3個です。

関連植物

ゴマギ
カンボク
オオデマリ

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、29頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
* 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』 5巻、学習研究社〈増補改訂 ベストフィールド図鑑〉、2009年8月4日、70頁。ISBN 978-4-05-403844-8。

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