ヤマショウビン

ヤマショウビン (山翡翠)

ヤマショウビン（学名: Halcyon pileata）は、ブッポウソウ目に属するカワセミ科の鳥です。その鮮やかな体色は観察者を魅了し、日本では渡りの時期に数少ない旅鳥として知られています。特に春の訪れとともに姿を見せることが多く、四季折々の生態を楽しむことができます。

分布について

ヤマショウビンは主に中国東部や朝鮮半島で繁殖し、冬になると東南アジアへ渡り、越冬します。また、インドの沿岸部やスリランカでは一年を通じて生息しています。日本では、長崎県の対馬、島根県の隠岐、石川県の舳倉島など日本海側の島々で、春と秋に渡来する稀な旅鳥として見られます。南西諸島でも観測されることがあり、全国的に観察記録があります。特に、春の渡り時期である4月から5月にかけて多く姿を見せるのが特徴で、秋の渡りでは観察されることが少なくなっています。また、日本国内で繁殖した記録もいくつかありますが、すべてヒナが生まれる前に失敗に終わっており、成功したケースは確認されていません。

形態

ヤマショウビンの体長は約30cmで、ハトよりやや小柄です。特徴的な点は、赤いくちばしと脚、黒い目の組み合わせです。英名の通り、頭部は黒く帽子のような印象を与え、首と胸は白色をしています。腹部は薄い黄褐色で、翼の芯は黒く、翼の先端や背中は美しい紺色です。これらの配色により、アオショウビンと似ていますが、体が少し大きく、頭部と首の色合いで区別が可能です。

生態

ヤマショウビンは通常、森林に生息していますが、捕食の際には河川や農耕地、海岸などに姿を現します。日本では、特に川や湖沼の岸辺での観察が多いです。繁殖地ではペアを形成し、共に生活する様子が見られます。

食性は動物食であり、小型動物を幅広く捕食します。具体的には、カニやカエル、トカゲ、ムカデなどが主な獲物です。繁殖形態は卵生で、巣はがけに掘った巣穴やシロアリのアリ塚を利用したり、樹洞に穴を掘ることもあります。産卵期間は5月から6月で、通常は4から6個の卵を産むと言われています。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）の評価によれば、ヤマショウビンは「VULNERABLE」（危急種）に分類されています。また、日本国内では旅鳥としての数が非常に少ないため、個別の評価は行われていません。

ヤマショウビンはその美しい姿と生態から、自然観察やバードウォッチングの対象となる魅力的な鳥です。今後の生息地保全や観察研究が期待されます。

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