ヤマトヌマエビ

ヤマトヌマエビ (大和沼蝦)

ヤマトヌマエビ（学名: Caridina multidentata）は、エビ目に属する淡水性のエビで、主にインド太平洋沿岸の河川に生息しています。日本のヌマエビ科の中では大きな種であり、ペットとして非常に人気があります。かつてはCaridina japonicaという学名が一般的でしたが、2006年にC. multidentataとして再分類されました。

形態

成体のサイズはオスが約35mm、メスが45mm程度であり、メスはさらに大型化することがあります。体型はずんぐりとしており、複眼は黒色です。額角には鋸歯状の棘があり、歩脚は短くがっしりしています。特に前2対の歩脚には小さな鋏があります。さらに、体色は半透明の淡青色から緑褐色まで多様で、尾には黒い斑点が特徴的です。オスとメスの体側にはそれぞれ異なる赤い斑点パターンが見られます。

スジエビやテナガエビとは異なり、ヤマトヌマエビは比較的に短くがっしりとした脚を持っており、体型的にも特徴があります。特にトゲナシヌマエビと似ていますが、後者は小型で斑点がないため、見分けがつきます。

分布

ヤマトヌマエビは、マダガスカル、フィジー、日本を含むインド太平洋沿岸の熱帯・亜熱帯域に広く分布しています。在来の分布としては、日本海側は鳥取県以西、太平洋側は千葉県以南の西日本に生息しています。特に、大きな河川の上流や中流域に多く見られますが、幼生期には海に出て成長し、川に戻る生態を持っています。

しかし、近年では環境の悪化や改修工事によって、生息地が狭まっている点は懸念されています。

生態

ヤマトヌマエビは雑食性であり、藻類や小型の動物、生物の死骸などを摂取します。特に、口を使って小さくちぎった餌を食べる様子が観察されており、夜間に活動的になります。昼間は水中の岩や水草の陰に隠れることが多く、捕獲時にはそれらを利用すると効果的です。また、エビ類に一般的な特徴として、ヤマトヌマエビは跳ねずに歩いていく行動が見られます。

生活史

このエビは特別な生活史を持っています。成体のメスは脱皮前にフェロモンを出し、オスを引き寄せて交尾を行います。脱皮後、メスは約1000～4000個の卵を抱え、孵化まで保護します。卵は孵化直後には発育し、その後すぐに親から離れ、海へ向かいます。この幼生は塩分濃度が必要なため、海または汽水域で成長します。

幼生は育成期間中に9回脱皮し、稚エビになるころには水底に適応した生活に移行します。特に、稚エビは河口域に集まり、夜間に水を掻きながら遡上することが知られています。

人間との関係

ヤマトヌマエビは食用にはあまり利用されませんが、熱帯魚とともに飼育されることが多く、タンクメイトとしての役割を果たします。健康的に育てるためには水質への配慮が必要で、特に薬品や急激な環境の変化には敏感です。特に稚エビは捕食されやすいため、飼育中の魚との調和も考慮しましょう。

本種はしっかりとした環境で飼育されれば、5年以上、時には15年以上も生きることが可能です。繁殖を目指す場合は、特殊な条件を整えて飼育することが重要です。

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