ヤマハ・XJR

ヤマハXJRシリーズ：空冷エンジンの咆哮と進化の歴史

ヤマハ発動機が製造・販売するXJRシリーズは、空冷エンジンを搭載したネイキッドタイプのオートバイとして、長年に渡り高い人気を誇ります。愛称は「ペケジェイアール」で親しまれ、その力強いエンジンとスタイリッシュなデザインは多くのライダーを魅了してきました。本記事では、XJRシリーズの中でも特に人気が高いXJR1200、XJR1300、XJR400について、モデル変遷や特徴を詳しく解説します。

XJR1200：レジェンドの始まり

1994年に発売されたXJR1200は、XJR400をベースに排気量を拡大したモデルです。1188ccの空冷並列4気筒エンジンは、当時としては世界最大の排気量を誇り、圧倒的なトルクと力強い加速を実現しました。同時期に発売されたカワサキゼファー1100やホンダCB1000スーパーフォアとしのぎを削り、人気を博しました。1996年には、ハーフカウルを装着したXJR1200Rも登場しましたが、生産期間は短かったようです。

XJR1300：さらなる進化と熟成

1998年に登場したXJR1300は、XJR1200の後継モデルとして、エンジン排気量を1250ccに拡大、トルクの向上を図りました。メッキシリンダーの採用による放熱効果の向上、鍛造ピストンの採用によるエンジン性能の向上、タイヤサイズやサスペンションセッティングの変更による走行性能の進化など、様々な改良が施されています。また、外装デザインも変更され、リアフェンダー回りが一新、エンジンカラーもブラックからシルバーに変更されました。

XJR1300は、発売後も継続的に改良が加えられました。2000年には200カ所以上の改良と8kgの軽量化、2003年には平成13年騒音規制対応と更なる2kgの軽量化、2006年には平成19年排出ガス規制に対応した燃料噴射装置の採用とEXUPシステムの導入などが行われました。日本国内仕様は2017年に生産終了となりましたが、海外、特に欧州市場ではカスタムベースとして人気を博し、現在も高い人気を誇っています。輸出仕様は、コスト削減のためブレーキキャリパーやリアサスペンションの簡素化が行われ、最高出力も国内仕様より高い106PSを発揮していました。2015年モデルからは、カフェレーサーを意識したデザインに変更され、ヘッドライトや燃料タンクの小型化、シートレールの短縮などが行われています。日本ではプレストコーポレーションがXJR1300Cとして逆輸入販売を行っています。

XJR400シリーズ：ミドルクラスのベストセラー

1993年に発売されたXJR400は、1980年代前半に発売されていたヤマハ・XJ400を彷彿とさせるデザインと、「空冷最速のネイキッド」を目標とした開発コンセプトで人気を博しました。ライバル車種であるホンダCB400スーパーフォア、カワサキゼファーと競合しながら、長きに渡り販売されました。

XJR400はその後も、XJR400S、XJR400R、XJR400R-IIとモデルチェンジを繰り返し、エンジン性能、足回り、装備などが改良されていきました。特にXJR400Rでは、オーリンズ製リアサスペンションとブレンボ製フロントキャリパーの採用により、走行性能が大きく向上しました。XJR400R-IIはビキニカウルとデジタルメーターを装備したモデルですが、市場の反応は芳しくなく、希少車となっています。2008年には、排出ガス規制強化のため生産終了となりました。

まとめ

XJRシリーズは、力強い空冷エンジンとスタイリッシュなデザイン、そして高い信頼性で、長年に渡り多くのライダーに愛されてきました。それぞれのモデルには、時代背景や技術革新が反映されており、その進化の歴史は、オートバイ史において重要な位置を占めています。中古市場でも根強い人気があり、現在でも多くのXJRが現役で走っています。その魅力は、単なる乗り物としてだけでなく、所有する喜びや、長く付き合う楽しさを提供してくれるところにあります。

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