ヤマハ・YZF-R7

ヤマハYZF-R7：レーシングスピリットとロードスポーツの融合

ヤマハYZF-R7は、ヤマハ発動機が製造するオートバイであり、その歴史は1998年にまで遡ります。現在までに2世代のモデルが存在し、それぞれ異なるコンセプトで開発された、魅力的なマシンです。

初代YZF-R7：サーキットを制したレーシングマシーン

初代YZF-R7は、1998年イギリスのバーミンガムモーターショーで発表された、世界選手権や全日本選手権を戦うためのホモロゲーションモデルとして誕生しました。YZF-R1やYZF-R6と同様に、コンパクトなエンジンと高い剛性を持つデルタボックス2フレームを採用。チタンバルブやニッケル複合メッキシリンダーなど、贅沢なパーツを惜しみなく投入した、まさにレーシングマシンのための設計です。

出力はフランスの規制に対応するため106PSに抑えられていましたが、キットパーツを使用することで170PS以上の性能を引き出すことが可能でした。この潜在能力の高さを証明したのが、全日本選手権で吉川和多留選手が1999年にタイトルを獲得したこと、そして鈴鹿8時間耐久ロードレースでポールポジションと最速ラップを記録したことです。2000年のスーパーバイク世界選手権では芳賀紀行選手がランキング2位という素晴らしい成績を残しました。

初代R7は、サーキットでの勝利を最優先した設計であり、軽量化のためアルミ製燃料タンクやクイックファスナーを採用、さらにオイルクーラーは水冷式、そしてカウル類はタイヤウォーマー装着のためのクリアランスを確保するなど、徹底的に軽量化とメンテナンス性を追求した設計でした。

2代目YZF-R7：洗練されたロードスポーツモデル

2021年に欧米で発表され、2022年に日本で発売された2代目YZF-R7は、初代とは全く異なるコンセプトで開発されました。「かっこよくて、ちょうどいい」をコンセプトに、MT-07をベースにフルカウルを装着した、扱いやすくスタイリッシュなロードスポーツモデルとして誕生しました。

開発にあたっては、R25/R3からのステップアップやリターンライダーなど、幅広い層への訴求が重視されました。そのため、社内では初代と異なるモデルにR7の名を付けることに対する議論もありましたが、最終的には「Fun Master of Super Sport」というコンセプトのもと、新しい時代のスーパースポーツとして受け入れられるという確信からR7の名称が継承されました。

MT-07をベースとしながらも、アシスト＆スリッパークラッチの搭載、セパレートハンドル、KYB製倒立フロントフォーク、ブレンボ製ラジアルマウントキャリパーなど、走りに直結する部分を大幅に改良。さらに、RシリーズのDNAを受け継いだシャープなデザイン、特徴的なM字ダクト、専用設計のフル液晶メーターなども魅力です。

フレームはMT-07と同じスチール製ダイヤモンドフレームですが、ねじり剛性を高めるためにアルミ製のセンターブレースで補強されています。エンジンはMT-07と同スペックの688cc水冷並列2気筒ですが、トルク重視の270度クランクを採用し、スムーズで力強い走りを実現しています。

2022年モデルは通常モデルに加え、ヤマハWGP参戦60周年記念モデルも発売されました。1980年のYZR500をモチーフにしたカラーリングが施され、限定400台という希少性も魅力です。

まとめ

初代YZF-R7は、レースシーンで活躍したレーシングモデルとしてその名を刻み込みました。一方、2代目YZF-R7は、より多くの人が楽しめるロードスポーツモデルとして、新たな価値を創造しています。それぞれのモデルが持つ個性と魅力は、ヤマハYZF-R7の歴史と進化を物語っています。どちらも、ヤマハの技術力と情熱が凝縮された、優れたオートバイです。

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