ヤマホトトギス

ヤマホトトギス

ヤマホトトギス（山杜鵑草、学名：Tricyrtis macropoda）は、ユリ科ホトトギス属に分類される多年草です。日本をはじめ、朝鮮半島にも分布し、山地の林下などに自生します。

特徴

地下茎を垂直に伸ばし、節から細い根を出します。茎は直立し、高さは30cmから70cm、時には1mに達することもあります。茎には斜め下向きの毛が生えています。

葉は互生し、葉身は長楕円形または楕円形で、長さは8cmから15cm程度。先端は短く尖っています。下部の葉は両面とも無毛で、表面には油滴状の濃い斑点がはっきりと見られます。中部の葉以上は、表面に毛があり、裏面には綿毛が密生し、基部は茎を抱きます。

花期は7月から9月にかけてで、茎の先端や上部の葉腋に散房花序を出し、上向きに花をつけます。花序には腺毛が密生しています。花は漏斗状の鐘形で、花被片は6個。長さは15mmから20mmで、白色地に紫色の斑点があり、下部に黄色の斑点が見られることもあります。内花被片3個は披針形で細く、外花被片3個は広倒披針形で内花被片よりも幅広くなっており、6片全てが強く反り返ります。外花被片の外面には腺毛が生え、基部には袋状の膨らみがあり、その中央には溝があります。雄蕊は6個で、花糸は寄り添って束状に立ち、毛状の突起と紫色の斑点が見られます。上部で反り返り、先端につく葯は淡黄色で外向きに開きます。花柱の先は3つに分かれ、球状の突起があり、各枝の先端はさらに2裂しています。花柱と分枝には紫色の斑点があります。果実は披針形の蒴果で、3つの稜があり、長さは約30mm。熟すと胞間裂開します。種子は楕円形で扁平です。染色体数は2n=26です。

葉や茎に毛があるものが一般的ですが、全く毛がないものや、花被片や花柱の紫色の斑点がほとんどないものなど、変異が豊富です。

分布と生育環境

日本国内では、北海道南西部、本州（岩手県以南）、四国、九州に分布し、山地の林下に生育しています。国外では、朝鮮半島に分布しています。

名前

和名「ヤマホトトギス」は、山地に生えるホトトギスを意味します。
種小名 macropoda は、「長い柄の」「太い軸の」という意味を持ちます。

分類

同属のヤマジノホトトギス Tricyrtis affinis に似ています。かつてはヤマジノホトトギスはヤマホトトギスの変種 Tricyrtis macropoda Miq. subsp. affinis (Makino) Kitam. (1966) とされていました。

ヤマジノホトトギスは茎の先端と葉腋に1つから2つの花をつけますが、ヤマホトトギスは茎の先端と上部の葉腋に散房花序をつけます。また、ヤマジノホトトギスの花被片は平開して反り返らず、花糸に紫色の斑点がないのに対し、ヤマホトトギスの花被片は強く反り返り、花糸に紫色の斑点があります。

下位分類

ムテンヤマホトトギス Tricyrtis macropoda Miq. f. epunctata Akasawa (1970) - 別名イヨホトトギス。高知県高岡郡津野町の天狗高原がタイプ標本の採集地です。品種名 epunctata は、「斑点のない」という意味です。
ムカゴホトトギス Tricyrtis macropoda Miq. var. bulbifera Y.Inoue, Nakamasu et Setoguchi (2020) - 2020年に発表された新変種です。開花期の後半に葉腋にむかごが生じます。佐賀県唐津市の天山がタイプ標本の採集地です。九州北部に分布します。変種名 bulbifera は、「鱗茎を持つ」という意味です。

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