ホトトギス属

ホトトギス属（Tricyrtis）

ホトトギス属は、ユリ科に属する多年草の植物群です。日本を中心に、東アジアからインドにかけて約20種が分布しており、そのうち11種は日本固有種とされています。主に山野の林下や林縁、湿った崖地などに自生し、独特な模様の花を咲かせることから、観賞用としても親しまれています。

特徴

ホトトギス属の植物は、日当たりの弱い場所を好み、互生する楕円形の葉を持ちます。葉脈は縦方向に走り、表面には細かな毛が生えているのが特徴です。花期は初夏から秋にかけてで、雌雄同花を咲かせます。花弁は通常6枚で、直径数cm程度のものが多く、2～4日程度開花します。ジョウロウホトトギス類は、黄色い釣鐘状の花を下向きに咲かせ、4～5日ほど観賞できます。

園芸植物としてのホトトギス

ホトトギスは、日陰でも育ち、秋に花を咲かせることから、園芸植物として人気があります。シロホトトギスなどの園芸品種のほか、ホトトギスとタイワンホトトギスの交配種も流通しています。一般的には秋に鉢植えを購入し、庭に植えるとランナーを伸ばして増えます。株分けによっても増やすことが可能です。

日本に分布する主な種

日本には、以下のようなホトトギス属の植物が分布しています。

ヤマジノホトトギス: 北海道から九州に分布。白い花弁に紫色の斑点が入ります。
シロバナヤマジノホトトギス: ヤマジノホトトギスの斑点がない品種です。
キバナノホトトギス: 宮崎県に自生する黄色い花を咲かせる種。絶滅危惧II類に指定されています。
タイワンホトトギス: 沖縄県や台湾に自生。絶滅危惧IA類に指定されています。
ホトトギス: 関東地方以西に分布する代表的な種です。
シロホトトギス: ホトトギスの斑点がない品種です。
サツマホトトギス
サガミジョウロウホトトギス: 神奈川県に自生する小型のジョウロウホトトギス。絶滅危惧IB類です。
スルガジョウロウホトトギス: 静岡県に自生するサガミジョウロウホトトギスの変種。絶滅危惧IB類です。
タマガワホトトギス: 北海道から九州の冷温帯域に分布。黄色に赤紫色の斑点が入った花を咲かせます。
ジョウロウホトトギス: 高知県に自生する黄色い釣鐘型の花を咲かせる種。絶滅危惧II類です。
キイジョウロウホトトギス: 和歌山県・奈良県に自生。ジョウロウホトトギスに似ていますが、葉が細くて光沢があります。絶滅危惧II類です。
ヤマホトトギス: 北海道南西部から九州、朝鮮半島に分布。白い花弁に大きな紫色の斑点が入ります。
チャボホトトギス: 黄色く小さい花を付け、花は一日で終わります。
タカクマホトトギス: 鹿児島県大隅半島の固有種。準絶滅危惧種に指定されています。
キバナノツキヌキホトトギス: 絶滅危惧IB類です。
* セトウチホトトギス: 近畿から中国・四国地方に分布。ヤマジノホトトギスに似ていますが、花被片の下部に黄色の斑点があります。

保全の現状

これらの種の中には地域固有種も多く存在しますが、園芸目的の盗掘や、開発行為によって生育地が破壊され、絶滅の危機に瀕している種も少なくありません。自生地における保護対策が急務となっています。

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