ヤワ

チェコを代表するオートバイメーカー、ヤワの歩み

ヤワ (Jawa) は、1929年にチェコスロバキアで設立された歴史あるオートバイメーカーです。その起源は、ドイツのヴァンダラー社の倒産に遡ります。チェコスロバキアのヤナチェック・アーマメンツ・ファクトリーがヴァンダラー社のオートバイ製造権利を取得、社名を「ヤナチェック・ヴァンドラー」としたのち、略称の「ヤワ」に改称されました。

設立と初期の成功

最初のモデルは、ヴァンダラー社が開発した4サイクル500ccのシャフトドライブ単気筒エンジンを搭載したオートバイでした。18馬力の出力と約17km/Lの燃費を誇り、当時としては高価ながらも高い信頼性で人気を集め、発売初年度から成功を収めました。しかし、1930年代前半の不況により、市場ではより安価でシンプルなオートバイが求められるようになりました。

これを受け、ヤワは1932年に5馬力の小型軽量モデル「ヤワ175」を発売します。約70kgの車体と、約29km/Lの燃費、最高速度約80km/hという性能は、瞬く間にヒットを記録し、発売初年度には3000台以上を販売。これは、最初の500ccモデルの3年間の販売台数の約3倍に相当する驚異的な数字でした。ヤワ175は1946年まで生産され、累計27,535台が製造されました。

四輪車製造への挑戦と第二次世界大戦後

ヤワはオートバイ製造と並行して、1934年にはDKW社のモデルをベースとした四輪車「ヤワ700」を発売、1937年には改良型の「ヤワ600Minor」を発表しました。四輪車の製造は第二次世界大戦中は限定的に続けられましたが、終戦後はほぼ中止されました。

第二次世界大戦後、ヤワは2ストローク250cc単気筒エンジンの実用的なオートバイを発売。世界各国、特に共産主義圏諸国に輸出され、そのコピーモデルは21世紀の現在でも中国の長江モーターワークス社で生産されているほどです。また、2ストローク350cc2気筒エンジンモデルは世界中で販売され、カナダのデパートチェーン「イートンズ」など、様々なブランドの下で流通しました。

1948年、チェコスロバキアが社会主義国家となり、バイク産業の国有化が進む中、ヤワは同じくチェコのオートバイメーカーであるCZと提携。CZはオフロードモデルで有名だったため、この提携によりトライアルやエンデューロモデルが両ブランドから発売されるようになりました。

モペッド製造とインド市場

ヤワは数々の2ストロークエンジン搭載モペッドを製造していました。その中でも「Babetta」は、オートバイとしては初めて電子制御式点火装置を搭載したモデルとして知られていますが、この「Tranizmo」ユニットは故障が多く、成功したとは言えませんでした。現在では、このユニットの故障率の高さや部品の入手困難さから、ヤワのモペッドは必ずしも高評価とは言えません。

一方、1950年代後半からインドで発売されたヤワのオートバイは、現在でも根強い人気を誇ります。現地会社「アイデアル・ヤワ」によって生産され、「Yezdi」ブランド名で販売された250ccモデルや350ccモデルは、インド各地で現役として走っています。特徴的な燃料タンクデザインは、コレクターズアイテムとしても人気です。

レース活動と現在

ヤワは、東ヨーロッパのメーカーの中でもモータースポーツに積極的なメーカーでした。ロードレースでは1960年代半ばまで世界選手権に参戦し、限られた予算の中でまずまずの成績を残しました。また、モトクロスやスピードウェイ、アイスレースでも活躍し、現在も破られていない記録も残しています。

1990年代の社会主義崩壊とチェコスロバキアの連邦解体後、ヤワの市販車部門とレース部門は別会社となりました。レース部門である「ヤワ・スピードウェイ」は順調な経営を続けていますが、市販車部門は苦戦を強いられています。2006年時点では、50cc、125cc、250ccモデルはホンダ車のデザインを参考にしていると言われており、650ccモデルにはBMWのF650シリーズと同じロータックス製エンジンが搭載されていました。伝統の2ストローク350ccモデルは、世界的な2ストロークエンジン離れにより生産終了となりました。

現在もヤワは650ccモデルを3つのバリエーションで販売しています。クラシックモデル、ストリートモデル、そしてエンデューロモデルなど、多様なニーズに対応したラインナップとなっています。ヤワの歴史は、技術革新と市場の変化に柔軟に対応してきた証であり、その伝統と挑戦は現在も続いています。

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