ヤーコプ・アードルング

ヤーコプ・アードルング（Jakob Adlung または Adelung、1699年 1月14日 - 1762年 7月5日）は、18世紀ドイツで多岐にわたる活動を展開した音楽家です。彼は単にオルガニストとしてだけでなく、教育者、楽器製作者、音楽史研究者、そして音楽理論家としても重要な足跡を残しました。

生涯

アードルングはエアフルト近郊のビンダースレーベンで生を受けました。最初の音楽の手ほどきは、オルガニストであった父ダーフィト・アードルングから受けました。母はドロテーア・エリーザベタ・モイエリーンです。

彼は1711年にエアフルトの聖アンドレアス初等学校に入学し、1713年からは市内のギムナジウムに進みました。この学生時代には、クリスティアーン・ライヒャルトの家に寄宿し、彼からもオルガンの指導を受けました。その後の高等教育として、1723年から1726年にかけてはイェーナ大学で哲学、文献学、神学を修めました。大学時代には、ヨハン・ニコラウス・バッハに師事し、オルガンの技術をさらに磨きました。

この頃、彼はヴァイマルでヨハン・ゴットフリート・ヴァルターと親交を結び、ヴァルターから音楽理論に関する書物を借り受けました。これらの資料は、後にアードルングが自身の音楽理論書を執筆する上で重要な基礎となりました。しかし、1736年に彼の自宅を襲った火災により、これらの書物を含む多くの財産と共に、執筆途中の原稿や資料の大半が失われてしまうという不幸に見舞われました。

火災の翌年である1737年、アードルングは故郷エアフルトに戻りました。そして、説教家教会のオルガニストを務めていたヨハン・ハインリヒ・ブットシュテットの死去に伴い、その後任としてその職に就きました。彼は生涯を終えるまで、このオルガニストの地位を維持しました。

音楽活動と並行して、アードルングは教育者としても精力的に活動しました。エアフルトのギムナジウムで語学を教える教授を務め、自身が記録したところによれば、1728年から1762年の間に284人の語学の生徒を指導しました。さらに、オルガン教師としても数多くの弟子を育成し、同期間に218人の生徒を受け持ちました。

また、彼は楽器製作者としても活動し、特に鍵盤楽器の製作に携わりました。自身の工房で同型の鍵盤楽器を16台製作したと記録されています。

私生活では、1732年にエリーザベト・リッターと結婚しました。彼女はマクデブルク近郊のグロース＝ヴァンツレーベンという町の市長の娘でした。

作品と著作

アードルングは、18世紀中頃における最も優れた音楽理論家の一人に数えられています。彼の著作は、同時代の重要な音楽理論家であるヨハン・マッテゾン、ローレンツ・クリストフ・ミツラー、ヨハン・ゴットフリート・ヴァルターらのものと並び称され、理論、美学、そして当時の音楽習慣に関する貴重な情報源となっています。特に、バロック音楽や古楽器の演奏法に関する記述は詳細であり、現代の研究においても非常に有用な情報を含んでいます。

主要な著作としては、まず『Anleitung zu der musikalischen Gelahrtheit』（1758年出版）が挙げられます。この書物には、アードルングが集め得た音楽史の記録、音楽と関連付けられる数学的な考察、平均律に関する記述、オルガンを含む様々な楽器についての解説、歌唱法、通奏低音の実践、コラールとその前奏曲、即興演奏、イタリア式タブラチュア、そして作曲法など、多岐にわたる音楽的知識が網羅されています。

もう一つの代表作は『Musica mechanica organoedi』です。これは彼が生涯をかけて取り組み、没後の1768年に出版された著作です。文字通り「オルガニストのための音楽機械学」と題されたこの本は、オルガン製作者にとって包括的な事典とも言うべき内容であり、80台以上のドイツ国内のオルガンに関する詳細な記述が含まれています。特に重要なのは、後にヨハン・ゼバスティアン・バッハの弟子となるJ.L.アルブレヒトとJ.F.アグリコーラによる版に付された編者注記です。これらは、彼らがバッハから直接学んだ知識に基づき、オルガンの製作や設計に関するバッハの見解を伝えているとされ、非常に価値が高いです。また、この著作の「Vorrede」（序文）には、アードルング自身の簡潔な自叙伝が収められています。

1768年には、死後にもう一つの著作『Musikalisches Siebengestirn, das ist Sieben zu der edlen Tonkunst gehörige Fragen』（「音楽の七つ星、すなわち高貴な音芸術に関する七つの問い」）が出版されました。

作曲家としては、彼は主にオルガン曲を手がけました。また、音楽史家としての視点から、『Anleitung zu der musikalischen Gelahrtheit』の中で、17世紀末にドイツへ平均律の概念を導入したのはアンドレアス・ヴェルクマイスターであったという見解を述べています。

アードルングの多岐にわたる才能と活動は、18世紀中頃のドイツにおける音楽文化の一端を示しており、特に彼の音楽理論およびオルガンに関する著作は、現代においても当時の音楽実践を理解するための貴重な資料として研究されています。

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