ユダヤ戦争

ユダヤ戦争

ユダヤ戦争（ヘブライ語: המרד הגדול）は、66年から73年にかけて帝政ローマとユダヤ属州のユダヤ人との間で繰り広げられた軍事的衝突を指します。この戦争は、ユダヤ人の支配に対する強い反感から起こり、後に歴史に深い影響を与えることとなりました。

開戦の背景

開戦以前、ユダヤ属州はローマの総督によって直接統治されていましたが、大王ヘロデの孫アグリッパ1世による巧妙な政治手腕により、ユダヤの統治を任されることとなりました。しかし、アグリッパ1世が44年に亡くなると、再びローマの支配下に戻されます。この時期、ローマ帝国は被支配民族の文化に配慮し統治を行っていましたが、ユダヤ人は一神教に基づく独自の文化を持っていたため、ローマへの反発は高まっていきました。

戦争の勃発

ユダヤ戦争の発端は、カイサリアにおけるユダヤ人の迫害にさかのぼります。ローマの総督フロルスがエルサレムの神殿から宝物を持ち出したことで、ユダヤ側の過激派が暴動を引き起こしました。ユダヤの指導者たちはシモン・バル・ギオラやヨハネら反ローマの強硬派でしたが、彼らは結束できずに内部分裂を繰り返していました。この混乱の中、エッセネ派も反乱に加わることとなり、結果的にローマ軍に対する大規模な反抗が始まります。

ローマは反乱を鎮圧するためにウェスパシアヌス将軍を派遣しますが、ローマ軍は数々の犠牲を出しながらも戦局を優位に進めていきました。ウェスパシアヌスはエルサレムの周辺都市を攻略し、最終的にはエルサレムそのものを孤立させることに成功しました。

エルサレム陥落

戦争は続き、68年4月には大規模な内乱が発生した結果、ローマ帝国も混乱に陥ります。69年には複数の皇帝が即位する事態となり、その間にウェスパシアヌスはエルサレム攻略の命を受けます。70年、ユダヤ人は神殿やアントニウス要塞で激烈に抵抗しましたが、圧倒的なローマ軍に敗北し、エルサレム神殿は燃え盛りました。この出来事は歴史に名を刻む重要な瞬間であり、ティトゥス将軍はローマに凱旋し、ティトゥスの凱旋門が建設されました。

マサダの戦い

エルサレム陥落後も、ユダヤの反乱は完全には終わらず、ギスカラのヨハネらがマサダなどで抵抗を続けました。マサダの戦いでは約1千人のユダヤ人が立てこもり、ローマ軍が包囲しました。ローマ軍の指揮官は力攻めを避け、周囲の崖を埋めることで攻撃ルートを作りましたが、ユダヤ人たちは最終的に自ら集団自決するという悲劇を選びました。これが73年の出来事として位置づけられ、ユダヤ戦争はその後の歴史に強い影響を与えました。

戦後の影響

この戦争は「第1次ユダヤ戦争」と呼ばれ、その後132年から135年にかけて起きたバル・コクバの乱は「第2次ユダヤ戦争」として知られています。戦争後、エルサレムにはローマ軍の常駐軍が置かれ、新たな時代が始まりました。

重要な記録

フラウィウス・ヨセフスというユダヤ人の軍人は、戦争を詳細に記録し、「ユダヤ戦記」として後世に伝えました。この一次史料は非常に貴重であり、当時の戦いの実態やユダヤ人の心境を知るための重要な資料です。

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