ユナイテッド航空629便爆破事件

ユナイテッド航空629便爆破事件

ユナイテッド航空629便爆破事件は、1955年11月1日に発生した航空機爆破事件です。ニューヨーク発シアトル行きのユナイテッド航空629便（ダグラス DC-6旅客機）が、経由地のデンバーを離陸直後に空中爆発し、乗員乗客44名全員が死亡しました。

事件の概要

1955年11月1日午後7時ごろ、ユナイテッド航空629便はデンバーからポートランドに向けて離陸しました。離陸からわずか10分後、高度1,500mを上昇中に突如爆発し、機体は広範囲に四散しました。空港の航空管制官もこの爆発を目撃しています。

爆発により機体後部は粉々になり、残された前部と両翼も落下するまでに飛散しました。原形を留めていたのは、機体主要部から離れた場所に落下した尾翼付近のみでした。

爆発箇所は胴体後部の第4貨物室であり、燃料タンクの位置からは外れていました。機体の残骸からは航空燃料以外の成分が爆発した痕跡や乾電池の破片などが発見され、故意による爆破の疑いが強まりました。

犯人の動機と逮捕

捜査の結果、FBIは乗客の中にいたデンバー在住の23歳のドライブイン経営者、ジョン・ギルバート・グレアムを逮捕しました。彼は母親に大きな紙袋を手渡すところを目撃されており、母親との関係がうまくいっていないという証言も複数得られました。

グレアムは当初、紙袋の中身は母親にプレゼントした手芸用品だと主張しましたが、市内で事故前に販売された事実がないことを突きつけられると、一転して犯行を自白しました。

自白によれば、彼は母親のデイジー・キング夫人の荷物にダイナマイト25本と起爆装置を仕込みました。2週間電気店でアルバイトをして、装置の制作に必要な電気技術を習得したとのことです。

犯行の動機は、母親にかけた総額37,500ドルの生命保険金と、不動産ビジネスで成功した母親の莫大な財産でした。彼は空港内の保険自動販売機で25セントの保険証書を6枚購入しましたが、母親の署名がなかったため保険は無効でした。なお、コロラド州ではこの事件をきっかけに、空港での保険自動販売機の販売が禁止されました。

グレアムは事故に見せかけて犯行を隠蔽しようとしましたが、科学捜査によって全容が解明されました。コロラド州の裁判所は、母親に対する殺人罪のみでグレアムに有罪を宣告し、1957年1月11日にガス室で死刑が執行されました。

保険金目的の航空機爆破事件

保険金目的の航空機爆破事件は、1949年のカナディアン航空機爆破事件をはじめ、過去にもいくつか発生しています。しかし、目的を達成した例はほとんどありません。

参考文献

コリン・エヴァンス『不完全犯罪ファイル』藤田真利子(訳)、明石書店、2000年。ISBN 978-4750313306。
デビッド・ゲロー『航空テロ』清水保俊(訳)、イカロス出版、1997年。

関連項目

航空事故
ナショナル航空967便墜落事故 - 1959年に発生した航空事故。機体主要部が海底に沈み、捜査機関が立件できなかったが、唯一成功した保険金詐欺と指摘されています。

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